大勢の中で孤独を感じたときには

春は出会いの季節。新入生歓迎会などでさっそく友だちができた人も多いと思います。でも、ちょっとした間違いで「もう無理だ」と友だちづくりを挫折した人も一定数いるかもしれません。学生時代、人の輪に入れなかったという嘉島さんは、どのように孤独感をいなしていたのでしょうか。

就職活動で「学生の頃、何に力を入れていましたか」という質問をされるたびに嘘をついていた。

多分、優良企業の内定を勝ち取る人たちは「海外留学」「ボランティア」とか「サークルで代表を務めて…」とか言うんだろう。何かに熱中し、壁にぶち当たり、どうやって問題解決をしたのかといったストーリーをつくった上で「御社での活躍に活かしたい」と結論づけるのが、自己PRの方程式だ。

ただ、残念ながら私にはそういう経験がない。サークル活動は集団行動が苦手なのですぐにフェードアウトしたし、ボランティアをするほどの高い視座は持ち合わせていなかった。学業では突出した結果を残せるほどの秀才でも努力家でもなかった。

映画を見るのも音楽を聴くのも好きだったが「自己PR」の武器になんてならなかった。

大学では、学食で耳を澄ませているだけで、それらについて熱く深い議論が日々聞こえる。それに背中越しに耳を傾けているだけで肩身が狭くなった。この人たちのような深い考察や広い知識も持たない私が、文化的な何かを「好き」だと言う資格なんてない。文学部のカフェテリアでひとつ80円ほどの小鉢をつつきながらそう思った。

仕方なくバイトの小ネタを膨らませた脆弱な「自己PR」で面接に挑んでいたが、実際に志望企業は全滅した。些細な出来事を盛りに盛ったエピソードでは自分をアピールすることなんて、できるわけがないのだ。

学生時代に一番力を入れてたことなんて思い浮かばない。力を入れるまではいかなくとも、一番時間をかけていたことは何なのか。私は長いことその答えを見つけられてこなかった。

こうしたぼんやりとした疑問の答えは、ふとした時に突然見つかることがある。

話しかける相手を間違えた懇親会

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匿名の街、東京

嘉島唯

若手ライターの急先鋒、嘉島唯さんによる待望のエッセイ連載。表参道、渋谷、お台場、秋葉原、銀座…。東京の街を舞台に、だれの胸の内にもある友人、知人、家族との思い出を鮮明に映し出します。 第2回cakseクリエイターコンテスト受賞者、嘉...もっと読む

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orthopkneesan 大人になってもいつも孤独は感じていますが、あまり気にならなくなりました。コロナ禍で会合が減って正直なところホッとします。 約2ヶ月前 replyretweetfavorite