借りパク奇譚

人を借りパクしたという、冗談にしてもきわどすぎる悪友の話 #9

【前回までのあらすじ】
これまでの「借りパク」を懺悔するために寺に集まった男女4人。これといった特徴のない男(儀式名ボンネ)は、タイヤを借りパクしてしまった事情として、「いきなり現れてタイヤを貸すだけ貸して消えてしまった男」の話をする。実は主人公の竹中たかし(儀式名たけし)が文庫を借りパクしたのも、「一方的に文庫を貸し消えた男」がいたからだった。謎を残しつつも、今度は悪友の山田(儀式名カンバルジャン)が告白する番となりーー。前回のお話はこちらからどうぞ。

「不謹慎ですが、僕はやっぱりカンバルさんの話にすごく興味があって、次、カンバルさんの話を聞いてもいいですか?」とボンネが今度は山田に話を振る。

’ボンネ’ナイス! おれは心の中で叫ぶ。人を借りパクしたという、冗談にしてもきわどすぎる話。内容次第では山田との友情は終わりだ。正直おれには山田に話を促す勇気がなかった。

「えっ、はい。でも、つまらない話ですよ」と無駄に謙遜する『ケンソルジャン』。

大丈夫、つまらないことなどあり得ない。おそらくここにいる誰もが聞きたいはずだ。いや、冗談でも人の名前を書いたお前にはそれを説明する義務があるのだ。

「えーそれでは私の話をしますね」

人を借りパクしたという男がそう言って話し始めた時、おれには火の管理をしていたポチの耳までがデカくなったように思えた。

「えー男は浮気性でした。えーおれは真面目でした。つまりはそういうことです……」

「えっ!? 全然わからないんですが」

急に口ベタになる山田にツッコむボンネ。

「えーと。そうだな、どこから話そうかな……」

おれがいるところでフィアンセとの馴れ初めを話したくないのか、なおもうだうだいう山田を、

「とりあえずは、パクさん、失礼、カンさんと被害者、柳田哲平の関係あたりから話し始めてめてみてはどうでしょうか?」

とおれは促す。

「あ、なるほど。そうですね。えーと、柳田哲平という、まあ、ワルい奴がいたんですね────────」

ワルい奴はお前だろ! 話の冒頭こそ心の中でそうツッコんだおれだったが、次第にどんどん’借りパク王子’の話に聞き入っていった。

この続きは有料会員の方のみ
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

この連載について

初回を読む
借りパク奇譚

宮藤宙太郎

この世にはびこる「借りパク」。それを懺悔し、みそぎができる寺があったら…? 今まで散々借りパクしてきたという悪友に巻き込まれる形で、みそぎに参加することになった主人公・竹中。そこに新たな2人の男女も加わり、奇妙な形で儀式が進んでいく。...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません