「不謹慎ですが、僕はやっぱりカンバルさんの話にすごく興味があって、次、カンバルさんの話を聞いてもいいですか?」とボンネが今度は山田に話を振る。
’ボンネ’ナイス! おれは心の中で叫ぶ。人を借りパクしたという、冗談にしてもきわどすぎる話。内容次第では山田との友情は終わりだ。正直おれには山田に話を促す勇気がなかった。
「えっ、はい。でも、つまらない話ですよ」と無駄に謙遜する『ケンソルジャン』。
大丈夫、つまらないことなどあり得ない。おそらくここにいる誰もが聞きたいはずだ。いや、冗談でも人の名前を書いたお前にはそれを説明する義務があるのだ。
「えーそれでは私の話をしますね」
人を借りパクしたという男がそう言って話し始めた時、おれには火の管理をしていたポチの耳までがデカくなったように思えた。
「えー男は浮気性でした。えーおれは真面目でした。つまりはそういうことです……」
「えっ!? 全然わからないんですが」
急に口ベタになる山田にツッコむボンネ。
「えーと。そうだな、どこから話そうかな……」
おれがいるところでフィアンセとの馴れ初めを話したくないのか、なおもうだうだいう山田を、
「とりあえずは、パクさん、失礼、カンさんと被害者、柳田哲平の関係あたりから話し始めてめてみてはどうでしょうか?」
とおれは促す。
「あ、なるほど。そうですね。えーと、柳田哲平という、まあ、ワルい奴がいたんですね────────」
ワルい奴はお前だろ! 話の冒頭こそ心の中でそうツッコんだおれだったが、次第にどんどん’借りパク王子’の話に聞き入っていった。