なかやまきんに君と寺田心さん

「次回はなかやまきんに君について書きます」と言っていた武田砂鉄さんでしたが、書き上がった原稿は寺田心さんでした。

大人の階段をメンテナンスしながらのぼる寺田心さん

この連載コラムでは、繰り返し寺田心を取り上げており、親しみと尊敬を込めて「寺田心さん」と表記してきた。テレビに映る寺田心さんは、その場にいる全員から「心くん!」と可愛がられてきたわけだが、たとえば「6年生の目標」を「下級生を支える」とした彼の判断や狙いを考え込むと、さん付けしかあり得ない。大人の階段をのぼるというか、古びた大人の階段をメンテナンスしながらのぼるような姿勢には、驚きとともに一抹の不安も感じていた。しかし、そうやって不安な気持ちをぶつけてくる大人の浅はかささえ先読みしており、達観する強度が貫かれてきた。

寺田心さんは現在13歳。中学生を「多感な時期」とするのはこれまた大人の勝手だが、「心くん!」と可愛がるだけの年齢ではなくなったのは確かである。多くの子役が乗り越えなければならない変革期にあるが、寺田心さんの場合は、当初から完成した状態で登場していたので、ここからいかなる変化があるのか、維持するのかはまだ見えてこない。私自身がBOOK OFFのヘビーユーザーであることも手伝って、寺田心さんの活動の中でも、「BOOK OFFなのに本ねえじゃん!」などと取り乱すような態度を見せるCMに出る姿を注視してきた。「あれだけいつも丁寧な寺田心くんが、このCMでは荒れている」という意外性が、あのCMの定着によって「寺田心くんって、よく荒れている」に転換しつつある。愛でられまくった派生としての意外性が、むしろ、定着してしまっている可能性はないか。

こちらを威嚇するような表情を見せる寺田心さん

BOOK OFFの新しいCMに起用されたのがなかやまきんに君。昨年末、NHK福岡のニュース番組『ロクいち!福岡』で一日警察署長を務めた様子が紹介され、「パワー!」と叫ぶ、お得意の筋肉ギャグでVTRが終わると、スタジオのアナウンサーが笑いをこらえきれず、次のニュースを読めなくなるという事態に陥った。大笑いするわけではなく、体の奥底から湧き上がってくる笑いを抑え込めなかった様子はSNSで拡散され、なかやまきんに君の再評価を生んだ。寺田心さんとなかやまきんに君、注目のコラボだ。なかやまきんに君がアメリカ・ロサンゼルスに筋肉留学したのが2006年、サンタモニカカレッジの運動生理学部を卒業したのが2011年。寺田心さんが生まれたのが2008年。なかやまきんに君の筋肉留学中に生まれたのだ。

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武田砂鉄責任編集。多量記事で多角的に、「TBSラジオ」を物語る。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

merli ”常に筋肉で応対するスタイルだった。だが、寺田心さんからの突然の申し出に、それさえできなかったのだ” 4ヶ月前 replyretweetfavorite

oddcourage https://t.co/kzXVzXKGGP 4ヶ月前 replyretweetfavorite