21. 旅に出る前に読みたい本
『酩酊混乱紀行「恐怖の報酬」日記』
恩田陸 ( 講談社文庫、二〇〇八年)
効く一言
気に入った場所、雰囲気のある場所に出会った時に、そこを舞台にして何が起きるかを考える。いや、考えるというより、自分やその場所に聞いてみるというほうが正しいだろう。
旅に出る。
はい、そこのあなた。旅に出るの、怖いですか? それとも楽しみですか? 私はわりと、怖がりタイプです。
ていうか旅だけじゃなく、何に対しても期待よりも恐怖のほうが勝る。だから私にとっての旅行って、【自分の恐怖とどう向き合うか】という人生の最高難度のテーマと向き合ういいきっかけ、というか、これから来るべき人生に対する高度な予行演習をしているよーなもんだと思っている。
何のための予行演習かと言うと……何だろう? いやそんな心配したって、何にもならないよ! 怖くない怖くない! 私は自分の内なる恐怖を笑い飛ばして、怖がりでないふりをする。今日も。
……だけど恩田陸さんの紀行エッセイ『酩酊混乱紀行「恐怖の報酬」日記』を読んでいると、自分の「旅に対する漠然とした恐怖」なんて忘れてしまう。
なぜならば、自分の数百倍も旅を怖がっている作者がそこにいるため、読むと自分の不安など忘れてしまうのである。
作者が感じている「旅への恐怖」とは何か。