ロシアのウクライナ侵攻で世界中の人の心が揺れている。
残酷に殺されているウクライナの市民を見て、「なんとかしてあげたい」という気持ちでいたたまれなくなる。ウクライナの国旗をソーシャルメディアに加えたり、国旗の色である青と黄色を身に着けた写真を流している人がいるのは、ウクライナの人々に「私たちはあなたのことを思っています」という連帯のメッセージを送りたいからだ。平和のメッセージも多い。
同時にロシアのプロパガンダをそのまま情報として流している人もいる。戦場から遠く離れた安全な場所にいる人たちがネット上で勇ましい言葉で戦っているのも珍しくない。
新型コロナウイルスのパンデミックが2年以上続いている最中に起こったウクライナ侵攻は、多くの人に対処できないほどの大きな心理的ストレスを与えているのだと思う。ウクライナ侵攻はもちろんのこと、それに加えたネット上の人々の言動が「なんとかしたい」「何もできない」という無力感と後ろめたさによるストレスを倍増させているのではないかと。
自分の心をケアするために決めた4つのこと
私も同様のストレスを感じている。The Invisible Kingdomという本のレビューに書いたように、慢性疾患がある私にはストレスは大敵である。ネット上で人々が争っているのを目撃するだけでストレスがたまる。何かをしたいが、やみくもに発言して悪影響を与えることは避けたい。
そこで私は次の4つのことを決めた。
●情報はニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙といった新聞とNPRのラジオから得る。酷い映像はなるべく避ける。
●ウクライナの歴史についての書籍を読む。
●プロパガンダやフェイクニュースを広めないように気をつける。
●「国境なき医師団」などの信頼できる機関に寄付する。
私はふだんから「寄付貯金」をしている。レストランでの食事、珈琲店でのコーヒー、贅沢品にお金を使う代わりに自分で料理し、自分でコーヒーをいれ、贅沢品は「見るだけで満足」した時に、その分を「寄付」にまわす。
これをやり始めたのは、20代後半の頃に初めて「原稿料」を受け取った時だ。知人の紹介で専門雑誌に寄稿したら5万円の原稿料をいただいた(35年前のほうが原稿料は現在より高かったのである)。全然期待していなかったタナボタだったので、当時ボランティアをしていた医療関係の慈善団体に全額を寄付した。東日本大震災の時には、日本赤十字社にその年のその日までの自分の収入をすべて寄付した。ウクライナ侵攻では、これからの活動がさらに重要になる「国境なき医師団」を選び、パンデミックによる入国規制でキャンセルせざるを得なかった日本への帰国で美味しい料理を沢山たべたことを想像し、それらに匹敵する金額を寄付した。
金額に関係なく「自分でできる範囲で何かをする」ことで自分の心が少し救われる。
だから、お薦めしたい方法だ。
「誕生日に家にいないのね」
このような不穏な状況の最中に私の誕生日がやってきた。
毎年家族のために何かイベントをしてあげているのに、(これまで長年文句を言わずにいたせいか)私に対しては「何もしなくていい」と思い込んでしまった様子だ。
数年前からは、時々「自分の誕生日を覚えていてくれるだけで人は嬉しいものだ」と時々メッセージを送っているのだが、そんなやんわりニュアンスでは伝わらないのがわが夫である(連載『まさかの自宅ウエディング』をお読みになっていた人ならわかるはず)。
そろそろ夫から「誕生日ディナーのお誘いが来るかな〜」と待っていたら、夫は「僕11日から4日ほどフロリダに行くから」と旅行予定を報告した。私の誕生日の最中ではないか。
しかもフロリダ行きは仕事での出張ではない。NASAでのチャリティイベントで、アポロ宇宙飛行士のチャーリー・デュークと一緒に無重力を体験する 「Zero Gravity」なのだ。
「誕生日に家にいないのね」と言うと、「いやいるよ。パナマに向かうのはその翌日だから、ディナーするならその夜はあいているよ」と自分の誕生日のことだと思っている。