「お連れしました。
若い坊主がよくとおるはっきりした声でそういうと、亮潤はゆっくりと目をあけた。
同時に、グワっと放たれる鋭い眼力、参加者一同、気圧されて直立する。
眼力にここまでビビったのは生まれて初めてかもしれない。早くここを離れたい。そう思うには十分の眼力である。
「皆様、本日はようこそお越し下さいました。本日『懺悔の門』をとり仕切ります。亮潤と申します。長い時間となります。どうぞ、楽な姿勢でお座りください」
ゆっくりとした口調で話す亮潤、促され、おれたちはおもむろにその場に腰をおろすも、その眼力にびびってか、楽な姿勢ではなく皆自然と正座になった。
「懺悔の門をくぐるのに必要なのは正直さです。皆様、今日は何よりも正直であって下さい」
「はい」
皆の返事がピッタリとそろう。
すごいな。おれは緊張の中で思った。これは気? と呼ぶものなのだろうか。何か得体の知れない力によって多少強引にも、おれたちの心がグワっとまとめあげられている。そんな感覚があった。
「それでは早速ですが、これより『名与の儀』をとり行います。皆様には最終的に懺悔の門をくぐっていただくことになりますが、それには普段使っている名前とは別の名前が必要となります。今から私が皆様一人一人の前へ行き、その人に合った名前を見つけ出し、それを与えていきます。各人はしっかりとそれを受け止め、そして受け入れてください。私が名前を宣言した後、それを受け入れる準備ができましたら、立ち上がり、私に一礼下さい」
「はい」
再び、皆の返事がそろう。
むむむ。どうやら「懺悔の門」とは思っていたよりはるかに大それた儀式なのかもしれない。おれはここへ来たことを後悔し始めていた。
亮潤はゆっくりと立ち上がり、とても静かな足取りでおれたちの方へ歩みよってくる。
皆の緊張が一気に高まる。