15. 早起きできるか不安なときに読みたい本
『モンテ・クリスト伯』
アレクサンドル・デュマ ( 1 〜 7 、山内義雄訳、岩波文庫、一九五六年)
効く一言
Wait and Hope!
Wait and Hope! ──待て、しかして希望せよ!
これが主人公モンテ・クリスト伯の最後の言葉だったわけですが(どんなシチュエーションでの最後の言葉だったのかは、読んでのお楽しみです)。でも実際のデュマは、いったいいつ待つ暇があったんだろうか……と言いたくなる人生を送っております。
といいますのも、作者のアレクサンドル・デュマは、分かっている範囲で愛人が三〇人以上いたらしい。
新聞連載『モンテ・クリスト伯』の印税は現在の価格にして五億円以上。だけど建てた豪邸の建築費は一〇億円以上。しかも名前は「モンテ・クリスト城」。劇場を建て、新聞を創刊し、果てはイタリア統一戦争のときに弾丸や武器の資金を用意した。
つまりは、『モンテ・クリスト伯』の作者デュマは、そういう人だったのである。
そういう人──派手で、お金を億単位で動かし、しかし合理主義ではなくロマン主義で、恋と愛とロマンチシズムに生きた小説家。それがデュマ。
うーん、人生で待ってる暇があったら自分から捕まえにいってるタイプに見える。とか書いちゃうと、
「え、『モンテ・クリスト伯』を読むよりもデュマの伝記を読んだほうが面白いんじゃない?」と思われそうだ。うーむ。その通りかもしれない。
でも、『モンテ・クリスト伯』を読むと、こう思う。作者はエネルギーに満ちて、ロマンチストで、たぶん慎重というよりは大胆という言葉が似合って、強くてやさしくてずるくてかっこいい人だったんだろうなーと。
ええそうです、私はこの小説が大好きなんです……。
と、いうわけで今回のテーマは「早起きできるか不安なときに読む本」。