懸命に畳んでもセーターとストールで貴重な引き出しの3分の2が埋まる。。ちなみにコートは引き出し一個をあっさり占拠
というわけで、人はどこまでモノを減らして生きていけるのかシリーズ・その2であります。
前回、前々回と、洗面所まわりのあれこれを「ほぼ全捨て」してしまった私の体験をお知らせしたわけだが、今回はいよいよ「洋服編」。
これ、案外全員悩んでるやつ。私の感じでは「いま断捨離中で……」という人のほとんどが、具体的には「服の断捨離」をしているのだ。ちなみに先日、着なくなった服のフリマイベントを友人とやったんだが、宣伝のためFacebookで告知したところ、反応のほとんどが「行きたい!」ではなく、「私も出品したい!」だった……。ま、そんな時代である。今や我らの人生はもれなく「着なくなった服」でできているのだ。
で、私がその問題の服をどこまで減らしたかというと、ざっと「9割減」といったところであろうか。
なぜここまでやったのかというと、止むに止まれぬ事情があったのだ。
築50年収納ゼロのワンルーム
何度も言うが、会社を辞めて移り住んだワンルームマンションには「収納」ってものがなかった。前にご紹介した洗面所まわりだけでなく、リビング兼ダイニング兼ベッドルーム(つまりはワンルーム)も、右を見ても左を見ても壁、壁……壁しかない! クロゼットとか押入れとか、そのような類のものは一切なかったのであります。
ちなみにこのマンションは築約50年でして、ということは第1回目の東京オリンピックが開かれた当時の建物である。日本経済がグングン上を向いていた、今思えば夢のように勢いのある時代だが、じゃあ実際に当時の人がどんな暮らしをしていたのかといえば、こんな収納ゼロの家でも平気の平左で生きていたんである。今の基準でいえば間違いなく正真正銘の「ミニマリスト」。つまりは当時は日本人はほぼ全員がミニマリストだったのだ。
ならば私とてここで暮らせぬはずがなかろうと自分を励ましたわけだが、とはいえ社会生活を送る以上は「持ち物ゼロ」というわけにもいかないので小さなタンスを買った。どうせなら家と同年代のものが良かろうと、昭和家具の店にあった50年前の中古タンス(約1万6000円)を購入。日焼けした木の風合いが古ぼけた部屋にぴったりで、思いの外オシャレに見える。なるほど物事は調和が全てなのだ。すごいデザイナーが作った高価な家具も、置く場所によって生きもすれば死にもする。同様に、どんなにボロい安い家具も、ぴったりの場所が得られればイキイキするらしい。まことに良いことを学ぶ。
捨てて捨てて捨てまくる
いずれにせよ、これからはこのタンスに収まるものだけで生きていくのだ。思わず「ヨロシクタノム」と頭を下げてみたり。しかしルンルンしていたのはそこまでで、いざ服やら下着やらストールやら靴下やら入れてみたら……ヨロシクも何も、驚くほど何も入りゃしねえ! だってコートも畳んで引き出しに入れるしかないんですよ。生まれてこのかたコートを畳んだことなどありません! そもそも畳んで良いものなのか? どう考えてもシワになるんじゃ? でもそれしか選択肢がないんだから仕方ない。なので頑張って畳んで入れたら予想はしてたがかさばりまくりである。さらに、予想していなかったのにかさばりやがったのがストール類。どんなに必死にクルクルまとめても、ストールの分際でセーター以上のボリュームではないか。
ってことで、結局は、服を捨てて捨て捨てまくるしかなかった。
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