※この記事の情報は、『週刊東洋経済』2019年10月12日発売当時のものです。
大半は医者に行く前に改善できる
「快眠戦略」を立てよう
ハイズ社長 医師・医学博士・裴 英洙
「睡眠こそ最強のビジネススキルである」。医師で医療機関再生コンサルティング会社も経営する裴英洙(はいえいしゅ)氏はそう話す。その真意は?
優秀な人ほど眠りは短い
日本人は世界的に見て睡眠時間が短い。経済協力開発機構(OECD)が2014年に実施した国際比較調査(各国15~64歳の男女の睡眠時間比較)によると、最長である南アフリカの9時間22分に比べ、日本人は男女ともに8時間未満。世界主要29カ国中でも韓国に次いで2番目に短い。17年に行われた総務省の調査でも、全国の平均睡眠時間(土日を含む10歳以上の週平均)は7時間42分だった。
実際、外来患者として訪れるビジネスパーソンに私が医師として「よく眠れているか?」と尋ねると、多くの人から「寝不足で疲れが取れない」「眠気で仕事に集中できない」「寝つきが悪い」といった答えが返ってくる。
背景としては、優秀なビジネスパーソンほど仕事に追われ、睡眠時間を削らざるをえないといった環境が挙げられる。ネットの普及で「常時オンライン状態」になったので、時と場所を選ばずに仕事ができる。日常生活を振り返ってもスマートフォンやSNS(交流サイト)の浸透で生活の夜型化は進むばかりだ。
睡眠に対する意識の低さも問題だ。海外で睡眠教育は珍しくないが、日本は学校や社会で学ぶことはない。ビジネスパーソンも、仕事のスキル・ナレッジには敏感だが、睡眠を含めたフィジカルスキルに関心が低いのは残念な話だ。ところが、快眠は体調を整え、翌日のパフォーマンスを最大化するための重要な要素であることは間違いない。ノウハウを紹介しよう。
睡眠の悩みを抱えている人の多くは、自身が「不眠症」だと思い込んでいる。次に挙げた4つの症状に当てはまり、日常生活に支障を来す状態であるなら、専門医を頼ってほしい。