日本料理の基本は鰹節と昆布の合わせ出汁……というイメージがありますが、それだけが出汁ではありません。例えば煮干しは手軽に使える素材です。鰹節はザルなどで濾す手間が必要ですが、煮干しは網杓子でざっくりとすくうだけでよく、なんならそのまま食べることもできます。
特に煮干しは毎日、食べる味噌汁に最適な出汁素材です。煮干しを使った味噌汁のレシピはこちらのcakes連載に掲載したので、参照してください。
さて、煮干しは小魚を煮てから干したもので、原料としてはいわし類が多く使われます。歴史的にみれば煮干し出汁は比較的新しい存在。西日本を中心に使われていたようですが、文献上に登場するのは近世になってからです。大正14年に書かれた大日本料理研究会 編『斬新美味惣菜料理顧問』という料理書に書かれている出汁のとり方は
とあり、現在の煮干し出汁のとり方とほとんど変わっていないことがわかります。
よい煮干しは色が違う
さて、煮干しの選び方です。食べる用に作られたソフトタイプの煮干しも売られていますが、パッケージに出汁用とある煮干しを選んでください。
具体的な選び方は同じく魚を原材料にした出汁素材である鰹節との違いを知るとより理解できます。鰹節は頭と内臓をとりのぞき、煮た後、焙乾という乾燥工程を踏みます。この過程で鰹から脂肪が落ちるのですが、一方の煮干しはとってきたイワシをそのまま煮た後、乾燥させて作るので、脂肪が残っています。脂肪は酸化しやすいため、出汁を作り置きしたり、保存状態を間違えると生臭みが出てしまいます。