僕の姉ちゃん』での黒木華の巧みさよ

益田ミリの漫画を原作にしたドラマ『僕の姉ちゃん』を、Amazon Prime Videoの先行配信で視聴した武田砂鉄さん。その作品の魅力や黒木華の演技について評します。

この実写化はアリすぎるぜ

実写化・ドラマ化されると原作のファンが睨みをきかせるのが常だが、あたかもパトロールと化していく様子を見ながら、「そういうの、やりすぎるのもよくないと思うけどね」くらいの気持ちでいる。ほぼ唯一、自分が睨む側にまわってしまうのが、益田ミリ作品の実写化である。益田ミリ作品を長年愛読してきたからこその警戒心は、その他の実写化に向けられてきた睨みと何ら変わらないのではないかと思いつつ、それを隠しながら「いや、この睨みについては特別なんだって」と主張する感じも、また常なのだろう。

Amazon Prime Videoで全話一挙先行配信された益田ミリ原作のドラマ『僕の姉ちゃん』を一気に見た。この実写化はアリだな、アリすぎる、アリすぎるぜ、と偉そうな評定を下す。それなりにベテラン社会人の姉と、社会人1年目の弟が期間限定で二人暮らしをする話なのだが、原作ではそのほとんどが室内での会話劇なのに対し、ドラマではそれぞれの職場でのシーンなどがふんだんに盛り込まれる。姉を演じるのが黒木華、弟を演じるのが杉野遥亮。益田ミリ作品の良さは、会話の余白というか、空間の余白というか、じっくり思考するために派手に動かないコマが用意されるのが特徴的なので、それを映像で表現するとどうしても視覚的要素が増えてしまう。だが、この作品は、その増加を感じさせなかったのだ。

ドラマで描かれる緊張の解け方

ソファーに横たわる姉の横たわり方がいい。肘掛けのところに頭を乗せて寝転がるのはもちろんのこと、両足を背もたれの上に乗っけたり、あえて床に下ろしてみたり、気だるい感じを受け止めてくれるソファーとの付き合い方が、そのまま、だらけ方の豊かさを知らせる。床に座り、テーブルを挟んで弟と向き合い、ああだこうだ話し続ける、姉の座り方もいい。足をV字に開き、テーブルの脚にくっつけるように座る。

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365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

tsuki_no_tsu イッキ見シタ✨良かった。原作や脚本が良いドラマはサラーっと観れて忘れるところが良い。きっとまた見たくなる 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

nktu_pdu ドラマ、とても見たくなった。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

egawa_a 武田砂鉄さんが!「僕の姉ちゃん」について書いてくださいました。嬉しい! https://t.co/ueutCr8Gcu 約1ヶ月前 replyretweetfavorite