長い間、物価の優等生とされ、様々な料理に使える卵は、冷蔵庫に必ず入れておきたい食材です。卵は焼くだけでおかずになる一方、安価なためにあまり注意を払わずに買っている人も多いようです。スーパーで「集客のための特売品にされやすい」という事情もあり、とにかく安いものを……という声もたまに聞きます。
「卵に味の差なんてあるの?」
それこそ昔はSMLというサイズくらいしか選ぶ基準がありませんでしたが、現在はスーパーに行くと様々な卵が売られ、それぞれに味が異なります。選ぶには前提となる知識が必要。というわけで、今日は卵を解説していきます。
卵の味の違いを生むもの
近所のスーパーで卵を4種類買ってきました。右上、たまごLとあるのは一般的な卵。サイズが統一されているので、お菓子作りなどに便利です。ちなみに卵のサイズは鶏の年齢で決まります。若い鶏は小さな卵を生み、年を重ねると徐々に大きくなるのです。
殻が赤い卵と白い卵があるのは鶏の違いです。原則的に羽が白い鶏は白い卵を生み、赤い鶏は茶色の卵を生みますが、味の違いはありません。卵の味に違いを生むのは餌×飼育環境の組み合わせで、特に影響が大きいのが餌です。
左上:きよら(アキタフーズ)右上:一般的な卵 左下:森の卵(伊勢)右下:放牧卵
具体的に見ていきましょう。卵を割ると中心に黄身があり、その周りを卵白が囲んでいます。よく見ると白身がさらに2つに分かれているのが見えるでしょうか? 黄身の周りを取り囲んでいるのが濃厚卵白で、その外側に水っぽく広がっているのが水様卵白です。
まずわかるのが黄身の色の違い。この差もやはり餌に由来し、とうもろこしやパプリカ、唐辛子、にんじんなどの配合が多いと濃いオレンジ色になります。
「黄身の色はある意味、作れるので味とは関係ない」と言われていますが、例えば餌としてとうもろこしの割合を増やすと濃厚な卵に、逆に飼料米を増やすと黄身の色がクリーム色になり、淡いさらっとした味の卵になります。オムレツなどの卵の味を効かせたい料理には濃厚系の卵が、だし巻き卵や茶碗蒸しなど出汁の味を生かしたい和風の料理にはさらっとした卵が向きます。
ここで普段の生活のなかではあまり機会がないと思いますが、卵のテイスティング(味見)の仕方を紹介しておきます。
卵の味を確かめる時は、まず水様卵白の味を確認しましょう。水様卵白には餌に起因する匂いが現れやすく、例えば魚粉やナタネ油かすを多く食べさせた鶏の卵からは生臭さを感じます。次に濃厚卵白、黄身の順番に味を確かめます。白身の味にもそれぞれ濃厚⇔さっぱり、黄身にも濃厚⇔さっぱりの差が出てきます。
例えば4種類を比較すると最も安価な卵の水様卵白はやはり生臭く、そのまま食べるのは厳しそうです。ただ、生臭さは加熱すればだいぶ和らぎますし、あるいは調理前に水様卵白を取り除くことでも抑えることができるので、使い方次第……ではありますが、白身を捨てるなどの手間を考えると、あまり安価な卵を買うのは考えもの。そこそこの価格の商品を選んだほうが良さそうです。
さて、いろいろな卵があるなかで今回、オススメするのはこちら。