​「気持ちを伝えたいだけ」という告白の裏側にある本音

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性や恋愛について考えるこの連載。今回は森さんが20歳だった頃のお話です。好きな人への思いがあふれるあまり「好きって気持ちを伝えたいだけだから」と告白したことを振り返り、その言葉の裏にあった本音に迫ります。

「好きって気持ちを伝えたいだけだから」
「私が勝手に好きなだけだから。どうなりたいとか、そういうのないから」

告白というか告白未満というか単なる独白というか、よくある曖昧なセリフを言われた人はいるだろうか。私は、実は言ったことがある。思いがあふれてどうしようもなくて、苦しくて切なくて言ってしまった、と当時は信じていた。が、今、振り返ってみると、実はそんな甘い心理ではなかったのである。

20代だった。就職をし、実家から離れ、携帯電話も普及した。しがらみから解放されて、自由に浮かれた頃だった。友達もいた。遊ぶ時間も遊ぶ場所もたくさんあった。足りないのは彼氏と恋愛だけだった。20代。若くて健康で、お金も友達もそれなりに確保しているのに、彼氏がいないだけで人生で大事な何かが欠落していると、当時の私は思い込んでいたのだ。

仲の良い友達には彼氏持ちもいれば、私のように彼氏のいない子もいた。彼氏のいない子は、彼氏を探しに奔走し、告白したりされたりを繰り返す。軽やかな行動力がないのは私だけだった。なぜなら私には、好きな人がいたから。

50歳になった今なら、片思いなんか煮詰めるもんじゃない、煮詰めすぎると甘くなりすぎて幻想を抱いてしまうか、苦くなりすぎて自分でもその思いを受け入れられなくなるのだ、とわかる。当然、相手だって好意が甘すぎたり苦すぎたりすれば、負担になるに違いない、と慮れるのだが、20代の私にはわからなかったし、できなかった。

「あ、この人、好きかも」と直感したら、なるべく早く気持ちを伝えるか、伝わるよう動くべきだ。そうしないと、片思いの相手そのものではなく、空想上の相手が心の中で膨れ上がってしまう。そうしていつのまにか自分がモンスターと化して、自分の都合のいいようにしか相手を見られなくなってしまう。

片思いで完結できるならいいけれど

片思いって、その相手がいない間にあれこれ妄想するのも楽しいのだけど、妄想と現実を混同したり、はては妄想が勝ってしまうのがこわいのだ。若ければ若いほど、そういう楽しさ半分の恐怖が起こり得る気がする。

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小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや愛への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。アラフィフの今、自分自身の経験を交えながら、女性の性や愛を追...もっと読む

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maihama_ddr 「気持ちを伝えたいだけ」という告白の裏側にある本音|森美樹 @morimikixxx | 3ヶ月前 replyretweetfavorite

syoujinkankyo 「気持ちを伝えたいだけ」という告白の裏側にある本音|森美樹 @morimikixxx | 3ヶ月前 replyretweetfavorite