独習 教養をみがく#1】教養を手に入れ世界を回す

この連載では、週刊東洋経済に掲載された記事からcakes読者にお読みいただきたいテーマをピックアップしてお届けします。

※この記事の情報は、『週刊東洋経済』2020年8月3日発売当時のものです。

【概論】教養を手に入れ世界を回す
情報を選択する力が必要

数学者・藤原正彦

 コロナ禍のなか、私たちはどのような知識や教養を身に付けるべきなのか。実は私はその問い自体に疑問を感じている。グローバリズムを牽引してきたのは効率重視の思想である。いちばん役に立つのは何か、という発想はまさしくこの思想に基づくもので誤りである。

 はっきり言うと、教養とは役に立たないものだ。役には立たないが、持っていないと駄目だというものだ。役に立つことだけを追いかけてはいけないのである。

 小柴昌俊さんがニュートリノの観測でノーベル賞を受賞したとき、「先生の研究はいつぐらいになったら人類の役に立ちますか」と聞かれた。すると小柴さんは、「500年経っても役に立たない」と答えた。

 それでも、この研究がすばらしいのは間違いない。小柴さんの研究により、日本の科学技術の水準が高くなり、レベルの底上げも進んだ。その結果、日本からイノベーションが生まれていく。こういう循環が発生したのである。

 役に立つものを追い求めるという発想が世界を毒してきた。だから、役に立たないもの、教養のようなものを持たないと、これからの世界は回らないのである。

 グローバリズムは新型コロナウイルスで破綻したようなものだ。人、物、金が自由に国境を移動する。それは数学的に見て、関係国すべての利潤が最大化される方式である。数学的に証明されている。

 エコノミストや経済学者は、そのことを「数学は絶対的に正しいから、数学的に証明されたのなら、もう問題ない」とそのまま受け入れてしまう。

数学的理論は通用せず
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
経済はドラマチックだ」週刊東洋経済

週刊東洋経済

「経済はドラマチックだ。」 日々、あふれる経済ニュース。じっと眼をこらすと、そこには挑戦や成功、葛藤や挫折があります。私たちは人々が放つ熱を記事にし、お伝えしています。週刊東洋経済でしか読めないストーリーがあります。 この連載では、週...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません