友達とギクシャクしたときに読みたい本

この連載では、文芸オタクの三宅香帆さんがシチュエーションに合った本を独断と偏見をもって「処方」していきます。第五回は、辻村深月さんの『凍りのくじら』です。家族とも恋人とも違う、友達という存在。この本を読めば、「友達っぽい人」と「友達」の違いがわかってしまうかも……。著書『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』から特別収録。

05. 友達とギクシャクしているときに読みたい本

凍りのくじら
辻村深月(講談社文庫、二〇〇八年)

効く一言
本当に大事なものがなくなって後悔して、どうしようもなくなって。
そうなった時、 私は、それに耐えられるかなぁ?

友達とは同じ方向を向いているときだけうまくやれる。のは世界の法則だと私は思う。相手が恋人ならば、こっちのほうを向いてよ、ってちょっと強引にその顔を引き寄せることがゆるされる。だけど友達はちがう。私たち自然に同じほうを向いているよね、と思っているときだけ、友達は友達でいられる。  

たとえば「私もあなたも恋愛なんてくだらなく思えて趣味の世界に没頭している」なんて状況の友達同士なんか最高だ。最強の友達。

受験勉強、文化祭、部活。中高生のイベントのどれもが友達をつくる絶好のチャンスであるのは、なかば強制的に同じ方向を見るしかないからだ。

だけど時が経って。あんなに仲のよかったふたりが、ある一方が既婚者で、ある一方が不倫に抵抗がなかったりすると……とたんにそれは脆く崩れる。ことがある。もちろん不倫なんてどんどんしていこーよ、と既婚者が寛大であるか、不倫しているほうが絶対にその事実を話さないストイックさを持っていたりするとちがうけれど。しかし一方は夫ののろけ、一方は不倫相手ののろけなんて状況には、ちょっと気まずくなるのが人情じゃなかろーか。だからこそ、誰かと仲良くすることが苦しくなるときも、あるんだろう。

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副作用あります!? 人生おたすけ処方本

三宅香帆

「○○なとき」→こんな本を処方、という形式で書評していきます。 《効用一覧》 ディケンズ『荒涼館』→「まっとうに生きよう…」と仕事へのやる気が起きます。 司馬遼太郎『坂の上の雲』→おじさんおばさんであることを受け入れられます。 ...もっと読む

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