いま社会には、もっともっと『眼』が必要。

クラウドにつながった録画カメラ映像サービス市場で国内ナンバーワンの座に就いているのがセーフィー株式会社。創業者にしてCEOの佐渡島隆平さんは、これからの社会に不可欠な技術・サービスをいかにして築き、広めていこうとしているのでしょうか。佐渡島さんの挑戦を、今回から前・後編に分けてお送りします。

これまでなかったものを、新たに世にあらしめる。そんな試みに挑む人がいま、ジャンルを越えて続々と現れている。本気で未来を拓かんとする先駆者たちの姿を、ここに書き留めていこう。

佐渡島隆平さんは2014年、セーフィー株式会社を立ち上げた。 クラウドカメラという「ハード」と、撮影された映像をデータとして活用する「ソフト」を、併せ提供する事業を通して、佐渡島さんがめざすところはこうだ。

映像から未来をつくる

これを実現するために、佐渡島さんが何を進めているかといえば、こんな言葉に集約できる。

世の中に、目を配って回る。

クラウドカメラという、いわば「第三の目」を行き渡らせる。それが「データの世紀」と言われる21世紀のインフラになると考えているのだ。

コロナ禍の医療機関を救った「眼」

世界中のあらゆる人が、現在も甚大な影響を被っているコロナ禍の、始まりのころを思い起こしてみたい。

日本で第一波が猛威を振るっていた2020年4月のこと。
横浜に寄港していたダイヤモンド・プリンセス号から感染者が多数出て、いくつかの病院が重症患者の治療にあたっていた。
東京の聖マリアンナ医科大学病院もそのひとつ。たくさんの患者を受け入れたものの、有用な情報・知見も防護服その他の医療機器・装備も、すべてが圧倒的に足りない状態。現場は手探りで、ことにあたっていた。

ひとつ確かな指針があったとすれば、患者と接触する医療スタッフは必要最小限とすべきなのは間違いない。
直接関わる人数が増えれば、それだけ感染拡大のリスクは高まってしまうから。
聖マリアンナ医科大学病院でも、患者のいる場所へ近づく人員を極力絞り込んで、治療にあたった。

その際に効力を発揮したのが、新しく導入した映像機器だった。
セーフィーがサービス提供している、クラウド録画カメラである。

患者のいる病室にカメラを設置し、映像を別室のパソコンによってリアルタイムでチェックし続けたのだ。患者の状況・状態をつねに正確に把握しながら、完全防備のうえ直接接触する医療スタッフに、音声で指示を出すことも可能になった。

クラウドカメラの導入によって、患者との直接接触人数・回数は激減させることができた。限られたマンパワーを有効に活用しながら、リスクを考えられ得るかぎり減らさなければ……。コロナ禍の医療現場が抱えるそんな難しい課題の解決に、カメラという名の「眼」が大きく寄与したのだった。

「遠隔業務」を進化させた

それでも2020年春先から夏にかけて、事態が収まるどころかますます深刻になっていったのは周知のところ。

そこでセーフィーでは医療機関向けに、無料で機器をレンタル提供する特別支援パッケージを用意した。院内感染の防止策と医療リソースの有効活用に、クラウドカメラをインフラとして使ってもらえればとの思いからだ。

状況に対して、自分たちにできる精一杯の貢献を……。そう考えて行動した結果、医療分野でのセーフィーのカメラ導入は、その後かなりの伸びを示した。

ことは医療現場にかぎらない。あらゆる場面で「ソーシャル・ディスタンス」が唱えられる時世にあって、ライブにしろ蓄積するデータにせよ、映像が活用される場は飛躍的に広がっている。カメラという「社会の眼」を配るというセーフィーの活動は、いままさに求められている技術でありサービスとなった。

セーフィーの導入先は建設業や流通業、小売店舗、飲食店、不動産などなど……。ほぼすべての産業分野に至っている。
そもそも感染症対策という以前に、コスト縮減や作業効率アップの観点から、非対面・非接触のリモート型作業の機会は増えていて、そのためのインフラが強く求められていたのだ。

とりわけ小売、流通、建設といった現場で、効率化とコミュニケーション強化に映像を活用したいというニーズは強まるばかりだった。

たとえば、とある建設工事の現場。車両ゲートにいまどんな車が来ているか。資材の在庫状況はどうなっているか。各箇所の進捗度合いは順調か……。クラウドカメラをいくつか設置しておけば、そうした状況をリアルタイムで確認できる。それら映像を見ながら、遠隔で現場全体の監督・指揮もできてしまう、現場の状況が細かくわかるので、次の作業に人員がどれくらい必要かといった作業計画立案にも役立つ。

小売ならこうだ。全国の駅ナカでシュークリーム販売をしている洋菓子店チェーンがある。1日のうち掻き入れどきとなる時間帯が15時台と18時台であることは経験則からわかっている。その時間にいかに商品を整然と美しくショーケースに積み上げておけるかが、売り上げを大きく左右するのだという。

そこで、全店舗にクラウドカメラを設置。15時と18時直前のショーケースの状態を本部で一括してチェックすることにした。商品を並び切れていなかったり美しく陳列できていない店舗にはすぐ連絡を入れて、改善依頼をする施策を始めると、目に見えて売り上げが伸びた。

売り上げアップに直接つながる情報を、現場映像から得ている例は他にも数多い。いわゆる「ライブ中継」がもっと気軽にできないか、との要望が多いことから、セーフィーは2020年夏、「Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)」を市場投入した。これはウェアラブルな小型カメラで、装着して現場に赴けば、すぐに映像を送信・記録することができる。リモート作業は格段にやりやすくなった。

ニーズを過不足なく満たしているからか、セーフィーは2014年創業のベンチャー企業であるのに、クラウド録画サービス市場ですでにシェアがトップとなっている。

それにしても、だ。セーフィーはなぜこれほどまで、現在の社会と時代から求められる存在となり得たのか。
「先見の明があって、時流をつかんだ」といえばそれまでだが、その着眼点はどうもたらされたのか。

社会と時代が大きく変わるとき、あまりにすんなりと変化に対応した組織と事業のつくり方を、CEOの佐渡島隆平に訊こう。

21世紀は「映像データの時代」か

「ウェブカメラ市場のシェアが拡大していくのはもちろんうれしいことですが、セーフィーとしてはそのパーセンテージだけを追っているつもりはありません。僕らが思うに、いま社会には、もっともっとクラウドカメラという『眼』が必要。現状はそれを着々と増やしているところ、という認識です」

セーフィーCEOの佐渡島隆平さんは、さらりとそう言う。

これから社会が変わっていくのに、映像がキモになるのは確信していた。だから、その映像データを得るための「カメラ=眼」の普及に注力してきた。いまはその途上にいるというわけか。

「そうです。たとえば、クルマをはじめとする交通機関の自動運転は、近々に起こる大きな変化でしょう。この進展は交通システムや乗り物が独自の『眼』を持つことによって進展します。室内でも、エアコンなどが部屋のどこに何人いるかを感知して温度や風量を調整するには、センサーという『眼』が不可欠。これからはもっと、社会のありとあらゆるところに『眼』がつくようになって、『眼』が収集したデータはクラウドでデータベースに統合され、最適な活用が図られていくことになります。人体にたとえれば、クラウドが脳の役割を果たしていくということですね」

なるほど人体にたとえるとわかりやすい。これまでのプロダクトやシステムは触覚や聴覚のようなセンサーで外界の情報を何とか摂取しようとしていた。『眼』のような視覚センサーで丸ごと大量の情報を摂取することはできていなかったということになる。

「その通りで、たとえばこれまでの警備システムは、異変が起こると『何者かによってドアが開けられました』という情報を感知して報せてくれるだけだった。ドアが『開いた・閉まった』という『ゼロ・イチ』の情報のみ。

これからセンサーが『眼』へと進化すれば、『ドアを開けたのは顔見知りのにこやかな夫婦でした』とか、あるいは『見たことのない怪しい人物です!』といった格段に詳しい情報を得られます。それをコンピュータが解析・判断して、適切な対応をアシストできたら、人の生活の安全性・快適性・利便性は格段に上がりますよね」

そのためには、世のあらゆる場所にカメラの「眼」が設けられ、そこから得た情報をクラウドデータとして蓄えておけるしくみを確立する必要がある。

「はい、それがこれからのデータ駆動型社会に必須の環境です。セーフィーはそこを担おうとしているんです」

<後編につづく>

この連載について

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本気で未来をつくるひと

山内宏泰

よりよい社会を実現するために、人や情報やモノやお金を動かしていく起業家や経営者たち。彼ら彼女たちはどんな世の中を、どうやってつくろうとしているのか。若き起業家や経営者たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。(旧連載名:「営むひと...もっと読む

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