どうせ無理」と戦う。小さな町工場から自家製ロケット打ち上げた男

ーー忘れかけていた夢がとめどなくあふれてくるーー北海道の小さな町工場から、幼いころからの夢だった「自分のロケット」の開発へ。誰もが「どうせ無理」だとあきらめていたことを、「工夫」によって次々と実現させていく著者の姿勢と、素朴で力強い言葉に心を揺さぶられます。『好奇心を“天職”に変える空想教室』より全文公開(毎週土曜日更新予定)。



あなたはなにが好きですか。


ぼくはロケットが好きです。




小さな町工場で、 ぼくはロケットを作っています。

宇宙に飛び出す、本物のロケットです。


この世には、
よっぽど頭が良くないと、
よっぽどお金を持ってないと、
よっぽど才能とか経験がないと、
「どうせ無理だ」 といわれることがたくさんあります。

でも、あんなにちっぽけな工場の人だって、
ロケットを飛ばせるくらいだから、
もしかしたら自分にもなにかできるんじゃないか。


そんな風に感じてもらえたらいいなと思って、
ぼくはロケットを作っています。


ぼくの工場には、よく子どもたちが遊びにきます。

彼らもたいていロケットが好きです。
だから一緒にロケットを作ってもらいます。
ただ、作り方は教えません。

わからなければ、自分で調べればいいからね。
まわりのやり方を見て、真似をすればいいからね。
自分がわかったことは、みんなに教えてあげてね。
そうすれば“わからないこと”なんて、あっという間になくなるから。

そう伝えると、みんなちゃんと自分たちの手でロケットを完成させます。

“自分のロケット”を完成させると、みんな我先にと飛ばしたがります。

でも、ためしにぼくがロケットを飛ばしてみせると、
「やっぱり飛ばしたくない」といいはじめます。
「あんなに飛ぶとは思わなかった」といいます。
発射ボタンを押せなくなってしまう子もいます。

“どうせ自分のやつはダメだ”って、ためらうのです。









でも、ロケットは飛ぶんです。


そうしたら変化が起こります。

みんな、やさしくなれるんです。
「作れない」と思っていたロケットを作れたから、
「飛ぶわけがない」と思っていたロケットを飛ばせたから、
小さな自信がわいたのです。





この小さな自信が、
これからの日本にどうしても必要なのです。





「あなたの夢はなんでしょうか?」

ありきたりな質問だと思ったでしょうか。今さら夢なんて、と恥ずかしく感じた人もいるでしょうか。
でもこれからは、夢がない人は生きていけなくなるかもしれません。
なぜなら今、とても大変なことが起こっているからです。

目の前に大きな壁が迫っているのです。

これは日本の人口のグラフです。

日本の人口は今までずっと増え続けてきました。
とくに明治維新を境に、その後とんでもない勢いで増えています。

ところが2000年の12月から、これまたとんでもない勢いで減っています。
つまりぼくたちは人口のピークをむかえ、その後、急激に減りはじめた斜面をたった今、下っているわけです。
過去に、この下り坂を経験した日本人はいません。だから人口のピークより後、人口が減り続ける社会では、なにが起こるか誰にも予測できません。

少なくとも、上の世代がいうところの「若い頃は」「昔は」「普通は」という常識は一切通用しないでしょう。
まったく新しい、はじめての時代をぼくたちは生きているのです。

人口が急に減った国では大変なことが起こります。
たとえば「お店の売上」は落ち続けます。「お店の売上」が、お客さんの数と比例するのは当たり前のことですからね。
お店だけではありません。まともに考えたら「経済がプラス成長する」とか「給料が毎年増える」ということは難しそうです。
今までの日本はそうではありませんでした。“すなお”で“まじめ”に仕事をがんばっていれば、毎年、給料がちょっとずつ増えました。

多くの人は、それは当然のことだと思っていたでしょう。
でもそれはたまたま、「人口が増え続けていたから」なのかもしれません。これからはどんどん人口が減っていきます。
だとすれば、会社に入ってすぐの初任給が最高で、あとは毎年給料が下がっていくということになります。そんなことがもう現実に起こりはじめています。
では、お先は真っ暗なんでしょうか?  
いいえ。
そのかわり、こんな時代だからこそ「夢が大切だ」といわれます。

「夢」というのはよく聞く言葉です。よく聞く言葉だからこそ、大人は軽く考えてしまいがちです。
でも夢は必要です。 もう一度ききます。
あなたの夢はなんでしょうか? そもそも「夢」って一体なんなのでしょうか?
これからみなさんと一緒に考えていきたいと思います。
ぼくははじめに「これから先の日本は、給料が毎年下がるような国になるかも」と縁起でもない話をしました。
でも実は全然大丈夫なんです。
ちょっと難しい言葉になりますが、日本の“単位労働時間あたりのGDP”は、フランスの半分しかないからです。
どういうことだかおわかりになりますか?
同じ時間働いたとしても、日本人が生み出すものは、フランス人の半分しかないということです。  
日本人はどれだけ効率の悪い仕事をさせられているのでしょうか。
つまり、まだいくらでも改善できるということです。
日本は2倍の経済成長ができるかもしれないし、それはもしかしたら世界を救うチカラになるかもしれません。  
そのためには間違いなく、みなさん一人ひとりの能力の向上が必要です。
そして能力の向上のためには、夢が必要です。
だからみなさんには、素敵な夢をたくさん持ってほしいのです。
夢について、もうみなさんは知っています。

“あきらめなければ、夢は叶う”すばらしい言葉です。本当のことだと思います。
でもその言葉の裏にはとんでもない副作用がありました。
それは「夢が叶わなかったのは、あきらめた自分が悪いんだろう」ということです。

あきらめた自分のことを責めている。そんな人を、ぼくはたくさん知っています。
でも自分を責める必要なんてありません。なぜなら日本が変だからです。

「夢」という言葉について調べてみたところ、アメリカの辞書には〈夢とは……強く願い、努力すれば実現できるもの〉と書かれていました。
ところが、日本の辞書には〈夢とは……はかないもの。叶わないもの〉と書かれていました。
実際、日本人には「あきらめた」んじゃなくて、「あきらめさせられた」人の方が圧倒的に多いのです。 〈夢とは……はかないもの。叶わないもの〉だと思い込んでいる、いろんな人たちによって、です。

自分を責める必要なんてまったくありません。
今、これから「自分の夢ってなんだろう?」と考えてほしいのです。
もしかしたら誰かに売りつけられた夢を、自分の夢だと思い込んでいるだけかもしれません。
自分の本当の夢を、一生懸命考えてほしいのです。




夢が「いらなかった」時代は終わろうとしている。



つづく

次回も『好奇心を“天職”に変える 空想教室』をよろしくお願いします。

*本連載は植松努・著『好奇心を“天職”に変える 空想教室』(サンクチュアリ出版)
をcakes用に再編集したものです。

忘れかけていた夢がとめどなくあふれてくる。

好奇心を“天職"に変える空想教室

植松 努
サンクチュアリ出版
2015-10-26

この連載について

植松努の空想教室

植松努

ー忘れかけていた夢がとめどなくあふれてくるー 北海道の小さな町工場から、幼いころからの夢だった「自分のロケット」の開発へ。夢見る経営者が涙まじりに訴え、TEDxで話題となった感動スピーチを書籍化。誰もが「どうせ無理」だとあきらめていた...もっと読む

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