新幹線vs.エアライン#4】​​もはや「4時間の壁」は無意味?

日々、あふれる経済ニュース。じっと眼をこらすと、そこには挑戦や成功、葛藤や挫折があります。この連載では、週刊東洋経済に掲載された記事からcakes読者にお読みいただきたいテーマをピックアップしてお届けします。

もはや「4時間の壁」は無意味?
新幹線もエアラインも重要 東京視点と違う「地方の論理」

青森大学教授・櫛引素夫

 東北・新潟地域は新幹線のネットワーク拡大に伴い、新幹線とエアラインの競争が最初に激化した地域だ。1982年の東北新幹線(盛岡以南)、上越新幹線の大宮開業を受け、飛行機は翌83年に羽田-新潟線が運行休止。さらに85年、両新幹線の大宮-上野間の開業で羽田-花巻(岩手)線、羽田-仙台線が姿を消した。一方、山形新幹線「つばさ」が92年に開業、99年に新庄まで延伸されると、2002年に羽田-山形線から全日空(ANA)が撤退し、日本航空(JAL)の1往復だけが残った。その後、14年3月に2往復となり、現在に至っている。

 2002年の東北新幹線・八戸開業後、03年4月にANAが羽田-青森線から撤退、跡を継いだスカイマークも同年11月に早々と撤退して、青森空港はJALの単独就航の路線になった。羽田-青森線はかつて1日9往復の運航で、最多の02年度には101万人を運んだ。だが、ANA撤退に加え、JALも05年3月に1日6往復から5往復に減便、旅客は3割近く減った。

 このままでは、10年の東北新幹線・新青森開業の前に空路が衰えてしまう。そんな危機感から、県はJALへ復便の要請を続け、05年12月には1日6往復に戻った。東北新幹線・新青森開業時は、機材が約300人乗りから、約150人乗りに小型化されたものの、減便は免れ、現在も1日6往復の運航である。なお、もともとJALの単独路線だった羽田-三沢線は02年、4往復から3往復へ減便し機材小型化も行い、何とか搭乗率を維持している。

 これら東北地方と対照的に、空路の強さを見せつけたのが北海道新幹線開業時の羽田-函館線だった。東京-函館間の移動シェアは航空機が74%で、新幹線の26%を圧倒する。

 余勢を駆って、航空業界は運賃面でも強気の施策を打ち出した。他地域では、航空会社は前日まで購入可能な、新幹線の運賃近くまで値下げした割引切符を設定し、これが実勢運賃に相当している。しかし、北海道新幹線は特急料金が割高に設定されたこともあり、函館発着は購入期限が3日前まで、価格も新幹線運賃より高めという割引切符が目立つ。地元は、新幹線の利用拡大を期待する一方、価格競争による実質的な航空運賃の値下げ、さらには、これらの相乗効果による入り込み客の増加を期待していた。しかし、入り込み客は増加したものの、新幹線の利用は伸び悩み、航空機の使い勝手の向上や値下げ幅も限定的だ。

 それでも、北海道新幹線は19年3月のダイヤ改正で、東京-新函館北斗間の所要時間を4分短縮する3時間58分として、待望の「4時間切り」を実現した。「4時間の壁」は、しばしば航空機と新幹線のシェアの分かれ目とされ、4時間を切ると新幹線に旅客が流れる。そう考えると、函館地域における航空機シェアの高さは異例ともいえる。むろん、単純に新幹線の乗車時間だけで決まる話ではない。函館は新幹線の本数が少なく、東京-新函館北斗間はわずか1日10往復。しかも、新函館北斗から函館駅まで約18キロメートル離れており、快速で15分、車なら30分近くかかる。これに対し、函館空港は市街地から8・5キロメートルの距離にあり、車で20分足らずだ。羽田-函館線は1日8往復と、便数自体も新幹線と遜色がない。

 一方、「4時間の壁」の例としてしばしば引用される広島は、東京行き「のぞみ」が1時間に2~5本、1日50本走る。加えて、広島空港は山間地に位置するため、リムジンバスで市街地から50分程度かかり、利便性も低い。新幹線の優位性は本数、駅舎の立地など、複合的な要因により支えられている。

「4時間の壁」は可変?

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