深夜薬局

深夜薬局をつくろう」。目指したのは、不夜城。

新宿・歌舞伎町に夜間だけ営業している「ニュクス薬局」。人には言えない、相談もできない。そんな、いろいろな事情を抱えたひとびとが訪れています。薬剤師の中沢さんは、なぜこんな薬局をつくったのか。「深夜薬局」ができ、街になじむまでの物語。今回はその第1弾。ライターの福田智弘さんがくわしくお話しを伺いました。2月18日発売の『深夜薬局』より特別公開します。

高校時代の夢

「薬剤師」というのは、国家資格だ。試験に受かる必要があるのはもちろんだが、その受験資格を得るためには、まず大学の薬学部に進学し、学び、卒業しなければならない。大学の薬学部は、中沢さんのころは4年制、現在は6年制となっている。

社会人になってから「薬剤師にでもなろうかな」とぼんやり目指せるような職業ではない。少なくとも高校生のときには、将来の姿を描いておく必要があるわけだ。
中沢さんも小さいころから医療者を目指していたのだろうか。

「じつはもともと、映画をつくりたかったんですよ。アメリカの大学の映画学科に進んで、コンピューターグラフィックスを学びたかった」

中沢さんは、はじめて『ジュラシック・パーク』のメイキングを見たときから映画制作の夢をずっと胸に抱いていたのだという。
ところが高校に入り、受験が視野に入ってきたころから、医療の道にも興味を持ちはじめた。そして、たまたま受けた薬学部の試験に合格したが、合格後も進路に迷っていたという。

「映画の夢も捨てきれない……」

多くのひとの憧れでもある薬学部への入学資格を得ながら、まだ子どものころからの夢をあきらめきれてはいなかったのだ。
そんなとき、悩める中沢青年に対して、お父さんは、こう声をかけてくれた。

「どうしてもアメリカに行きたいなら、大学を卒業して国家資格を取ってから行けばいいんじゃないか」

そうか、なにも夢を捨てる必要はないんだ。資格を取ってからでも道はつくれるんだ、と考え、納得したうえで薬学部への進学を決めたのだ。

「今では、やっぱり父親の考えが大正解って感じです」
と、中沢さんは薬学の道を突き進んでいる。映画の道はあきらめたのだろうか?

「いまも映画は好きで、休みの日はYouTubeばっかり見ています。だからあんまりお金を使わなくて済んでるんですけど(笑)。後ろ髪? 引かれたことはありません。卒業してからは、映画の道を進もうと思ったことはないですね」

「薬剤師は薬剤師で、楽しいですから」


「深夜薬局をつくろう」

卒業後、チェーン展開する普通の薬局の薬剤師として勤務したという中沢さん。しかし、頭のどこかで、ずっと独立を考えていたという。いちばんの理由は、会社員でいつづけることに魅力を感じなかったから。出世することやお金を稼ぐことに、まるで興味がなかったのだ

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深夜薬局

福田智弘

新宿・歌舞伎町。このネオン街の一角に、小さな薬局があります。「ニュクス薬局」。営業時間は夜8時から翌朝9時まで。薬剤師はたった一人。訪れるのは、親からの虐待を告白する多重人格の女性やコロナ禍で生活苦を訴える風俗嬢、「眠れない」とあせる...もっと読む

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ShoProBooks 【好評連載中!】 『深夜薬局』 舞台は、新宿・歌舞伎町に実在する深夜のみ営業する薬局。どうして、こんな薬局を? cakesにて連載中。たびたび、ランクインしています! #深夜薬局 https://t.co/XhKDaArxdl 7ヶ月前 replyretweetfavorite