呉国(くれのくに)からの使者②
十三年三月、サホビコ(狭穂彦)※1の玄孫・ハタネ(歯田根命)※2が、密かに采女のヤマノベノコシマコ(山辺小島子)※3を犯しました。
天皇はそこで、ハタネを、物部大連メに引き渡し、責めさせました。
ハタネは、馬八頭、太刀八振(ふり)で罪を祓(はら)いました※4。そして、歌を歌いました。
山辺(やまのべ)の 小島子(こしまこ)故(ゆゑ)に
人衒(ひとでら)ふ 馬の八匹(やつぎ)は 惜(を)しけくもなし
(※訳:
山辺のコシマコのためなら
人が自慢して見せびらかすような
馬の八頭など惜しくもない)
大連メはそれを聞いて、天皇に報告しました。
天皇は、ハタネに命じて、資財を露わにして、餌香市(えかのいち)※5の近くの橘(たちばな)の根元に置かせ、餌香の長野邑(ながののむら)※6を、物部大連メに与えました。
八月、播磨国(はりまのくに)の御井隈(みいくま)※7の人・アヤシノオマロ(文石小麻呂)※8は、力が強く心根が恐く、思うままに暴れて残虐なふるまいをしました。
道中で追い剝ぎをして通行をさまたげ、また、商人の舟を止めて残らず奪い取り、以前から、国法に違反して租賦(そふ)を納めませんでした※9。
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