ストーリーで感動が生まれるとき

誰もが発信する時代に、見る人に興味をもってもらい、感動を生み出すストーリーの作り方を紹介するこの連載。第6回は、「感動とは何か?」についてです。そもそも「感動する」とはどのような状態なのでしょうか。そして、ストーリーで感動はどう生まれるのでしょうか?

感動は無意識に起こる

この章ではそもそも「感動とは何か?」というところを掘り下げていきたいと思います。感動とは何か? この問いに対しての正面からの答えを私は見たことがありません。不思議に思って脳科学や医学を研究している友人に尋ねたことがあるのですが、感動は科学の範疇ではないと聞いて納得しました。つまり感動は主観的なもので、科学的に捉えられないということなのです。

たとえば興奮や満足は、「脳内でドーパミンやアドレナリンが出ている」など、生理学的な状態として捉えることができます。しかし感動となると、誰もがその存在は体験したり肯定しつつも、厳密に定義することができないのです。

では、満足と感動の違いは何か。私は、次のように考えています。

「満足」は感情が高まったときに感じる生理学的な現象
「感動」は必ずしも感情を伴わない無意識的な現象

意外に思われるかもしれませんが、感動している瞬間は意識は働いていません。事実、映画をみて「私、今感動してる」と自覚したことがある人はいないと思います。これは前章で書いた「没入」にもつながるところですが、感動というのは意識的に捉えられない状態なのです。

では人が感動するとき、心はどんな状態になっているのか、心理学的な側面からひもといていきましょう。


「心」のしくみ

人間は1歳半ごろに「自我(Ego)」が芽生えると言われています。「自我」とは意識の中にある司令塔のようなものです。それまでは自分の外と内側の区別もつかず、世の中と自分とが渾然一体となった状態です。赤ちゃんの目がとてもピュアに見えるのは、すべてをそのまま受け入れていることから来るものなのでしょう。

下の図は、イギリスの心理学者ブリッジスが1932年に発表した「情緒の分化樹形図」です。感情は、大きく「不快」と「快」の2方向に分かれて進化していき、不快は、怒り、嫌悪、恐れ、嫉妬へと細分化していきます。快に比べて、不快の要素のほうが早くていくのは、それが生存により必要だからでしょう。そうやって、1歳半くらいまでに、ひととおりの感情が芽生え、自我が生まれると言われています。つまり、無意識だけだった「心」が、無意識と意識の両方を持った状態になるのです。

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人の心を動かすストーリーの作りかた入門

たちばな やすひと

誰もが発信する時代に、どうやって自分の作品に興味をもってもらい、見る人の心を動かすことができるのでしょうか? 人はどんなストーリーに惹きつけられ、どういう時に感動するのでしょうか? Netflix『全裸監督』はじめ、数々の映画・ドラマ...もっと読む

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