最後まで見届けたくなるストーリーの秘密

誰もが発信する時代に、見る人に興味をもってもらい、感動を生み出すストーリーの作り方を紹介するこの連載。第2回は、「見届けたいと思う目的」を作る方法についてです。『水戸黄門』のストーリーに人々が惹きつけられる理由は何なのでしょうか?

見届けたいと思う目的をどう作るか?

第1章で、ストーリーに人を惹きつけるにはCQ(セントラル・クエスチョン)を魅力的にする必要があると書きました。そして「魅力的な主体」と「見届けたいと思う目的」を組み合わせれば「魅力的なCQ」ができると。では、具体的にはどうやって作ったらいいのでしょうか?「魅力的な主体(主人公)」に関しては第4章で説明するので、この章では「見届けたいと思う目的」の話をしたいと思います。

「見届けたいと思う目的」を作る方法、それはずばり、その目的を「切実」にすることです。私は常々、キャラクターのもつ目的は「切実であればあるほどいい」という言い方をしています。切実というのは、何も悲しい目的ということではなく、どうしても叶えたいという気持ちの強さを表しています。「絶対にチャンピオンになる」とか「あの人とどうしても結ばれたい」といった目的に感じる“強い想い”のことです。

たとえば『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』のような大ヒット作を例にとると、「俺は絶対に海賊王になる!」とか、「僕が絶対に妹の禰豆子を守る!」という主人公の強く切実な想いがストーリーを引っ張っていることは間違いないでしょう。その切実さに、その目的がどうなるかを見届けたい、もっと言えば、その目的が叶うところを見届けたいと思うのです。

主体が持つ目的をできるだけ切実にして、それを応援したい、それが叶うところを見届けたい、そんなふうに思わせることが重要です。


『水戸黄門』のストーリーに惹きつけられる理由

ここからは少し、応用編に入っていきます。

先ほど『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』の例を出しましたが、『水戸黄門』の場合はどうでしょうか?

『水戸黄門』というドラマの中で、主人公の「水戸光圀(水戸黄門)」の目的に感じる切実さはどれほど強いでしょうか? 「何としても日本を平和にしてみせる!」という黄門様の切実な目的に引き込まれている、わけではないですよね。多くの人が『水戸黄門』に期待しているのは、勧善懲悪なストーリー性、つまり最後に悪者を成敗するシーンだと思うのですが、そのときに主人公の切実な思いではないとしたら、我々は何に引き込まれているのでしょうか?

よくよく思い出してみると、切実な思いを抱いているのは「悪代官にお父さんを殺された町人の娘」だったりするわけです。そのかわいそうな娘のために黄門様に「悪代官をやっつけてほしい!」と我々は願いながら見ています。つまり、主人公の目的が切実なのではなく、そこに出てくる客体(ゲスト)の目的が切実なのです。このときのCQを私はこう表現しています。

CQ=はたして主体は客体(ゲスト)の目的を達成できるでしょうか?

この「主体+客体の目的」という構造は、これまで説明してきた「主体+目的」のバリエーションと言えます。「客体の目的を叶える」のも大きく言えば主体の目的ですが、主体の切実さではなく、客体の切実さで惹きつけるところが違います。この場合では、客体のもつ目的が切実であればあるほど、ストーリーに引き込まれます。

テレビドラマの世界で言えば、医療ドラマ、刑事ドラマ、学園ドラマなどに多いストーリー・パターンです。主人公のお医者さんが、生きたいと切実に願う患者さん(あるいは切実に回復を願う家族)の目的を叶えたり、教師が毎回フィーチャーされる生徒に向き合って、その生徒の問題を解決したりするストーリーです。

この「主体+客体の目的」というパターンは、「主体+目的」の場合より、似たような構造のストーリーを作り続けることができるので、テレビドラマの世界では重宝されているのだと思います。


目的の切実さを表現するもうひとつの方法
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人の心を動かすストーリーの作りかた入門

たちばな やすひと

誰もが発信する時代に、どうやって自分の作品に興味をもってもらい、見る人の心を動かすことができるのでしょうか? 人はどんなストーリーに惹きつけられ、どういう時に感動するのでしょうか? Netflix『全裸監督』はじめ、数々の映画・ドラマ...もっと読む

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