新羅征討の開始
雄略九年三月、天皇は、自ら新羅を討とうと思いました。神は、天皇を諫めて、
「行ってはならない」
と告げました。それで天皇は、行くことができませんでした。
紀のオユミ(小弓宿禰)※1、蘇我のカラコ(韓子宿禰)※2、大伴連カタリ(談)※3、オカヒ(小鹿火宿禰)※4に命じて言いました。
「新羅は、西に国を建ててから代々、臣と称して、朝貢も欠かさなかった。私が天下の王となってから、身を対馬(つしま)の向こうに置いたまま、行いも匝羅(さわら)※5で隠し、高句麗からの貢ぎ物を邪魔し、百済の城を併合した。
それどころか、朝貢も怠っている。
狼の荒い心で、食べ飽きては去り、飢えてはやってくる。
お前たち四人の卿(まえつきみ)を、大将に任ずる。天子の軍勢を率いて、攻め討ち、天罰を下せ」
このとき、オユミは憂いて、大伴大連ムロヤ(室屋)を遣わして、天皇に陳情しました。
「私は、臆病者とはいえ、謹んでご命令をお受けします。ただ、現在、妻が亡くなったばかりで、私の世話をする者が誰もおりません。どうか、このことを天皇に詳しく申し上げてください」
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