お金はなぜ「くだらない」といえるのか?

ーー忘れかけていた夢がとめどなくあふれてくるーー北海道の小さな町工場から、幼いころからの夢だった「自分のロケット」の開発へ。誰もが「どうせ無理」だとあきらめていたことを、「工夫」によって次々と実現させていく著者の姿勢と、素朴で力強い言葉に心を揺さぶられます。『好奇心を“天職”に変える空想教室』(サンクチュアリ出版)より全文公開(毎週土曜日更新予定)。

まだ小さかったぼくに、ばあちゃんが大事なことを教えてくれました。
ばあちゃんは北海道の北にある樺太(からふと)という大きな島で、戦争の前から車の会社をやっていました。
当時は車の免許を持っている人の数が、飛行機の免許を持っている人の数よりも少なかったような時代でしたが、ばあちゃんはがんばって働いて、お金を貯めて、家族みんなで豊かに暮らしていたそうです。
そこに1945年、突然ソビエトという国が攻めてきます。町に戦車がやってきて、たくさんの人が殺されて、樺太は「サハリン」とよばれるようになりました。
ばあちゃんはなんとか逃げ延びたけども、日本に帰ってきたときには、がんばって貯めたお金が全部紙くずになっていたことを知ったそうです。
だから、ばあちゃんは小さいぼくに教えてくれました。

お金はくだらないよ。
一晩で価値が変わることがあるからね。
だからお金があったら、貯金なんてしないで、本を買いなさい。
知識を頭に入れなさい。
それは誰にも取られないし、価値も変わらない。そして、新しい価値を生み出してくれるから。

そう教えてくれたんです。
さらにばあちゃんは「お金は、“自分の知恵と経験”のために使ったら、貯まり続ける」と教えてくれました。
その教えを守っているぼくは、外で食事をするとき、なるべく料理を作っているところが見える場所で食べています。
そうしたら、作り方を覚えてしまうことがあります。
その作り方を居酒屋をやっている地元の友だちに教えたら、そのお店のメニューが1品増えることもあります。
それはきっと「ぼくがご飯代を払った以上の価値を持って帰ってきた」ということになるのでしょう。
お金は「仇を取るように」使ったら減りません。ぜひお金は大事に使ってほしいと思います。

またぼくには大好きなじいちゃんがいました。大きくてやさしいじいちゃんでした。
じいちゃんはぼくを大切にしてくれて、いつも一緒に遊んでくれました。
そんなじいちゃんとの一番の思い出はアポロの着陸です。3歳だったぼくは、じいちゃんのあぐらの中で、テレビをみていました。でもぼくの記憶にあるのは画面ではありません。
じいちゃんです。
じいちゃんが見たこともないほど喜ぶんです。
ほらみろー、ほらみろー、人が月にいったぞって。おまえも月にいけるぞーって喜んでいるんです。
こんな笑顔は見たことないと思いました。
ぼくはその笑顔をもう一回見たくなり、本屋に行って飛行機やロケットの本を手にしたり、飛行機やロケットの話をしたりするようになりました。
するとじいちゃんはいつも喜んでくれて、でっかい手でぼくの頭をなでてくれました。
うれしかったです。ぼくはきっとじいちゃんの笑顔がみたくて、知らないうちにロケットとか飛行機が好きになったんだろうなと思っています。
ばあちゃんやじいちゃんのおかげで本屋が大好きになり、小学生になったぼくは本屋で運命の本に出会います。

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好奇心を“天職"に変える空想教室

植松 努
サンクチュアリ出版
2015-10-26

この連載について

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植松努の空想教室

植松努

ー忘れかけていた夢がとめどなくあふれてくるー 北海道の小さな町工場から、幼いころからの夢だった「自分のロケット」の開発へ。夢見る経営者が涙まじりに訴え、TEDxで話題となった感動スピーチを書籍化。誰もが「どうせ無理」だとあきらめていた...もっと読む

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DI5K455ETTE ”つくりかたさえわかれば、つくれないものはない。 ” 3ヶ月前 replyretweetfavorite