彼はサークルの先輩だった。
途中加入して、少々浮き気味だった私に、何かと構ってくれたのが彼だった。 根っからの優等生気質で、兄貴肌で、底抜けの優しさを持っている彼のことが、みんな好きだった。
一方私はコミュ障で、距離感というものがよくわからず、人と接することがうまくいかなかった。 やめておけばいいのに、私はなんとなく誰かと恋に落ち、たちまち嫌になって別れるというバカを繰り返した。
サークルを荒らしまくる私に、彼はいつも
「ほんとバカ」
と言った。
そして一緒にお酒を飲んで、買い物に行って、ダーツをして、カラオケをして。
先輩後輩だったけど、私たちは本当に仲がよかった。
タメ口で話す私に対し、「お前だけは特別な」と彼は言った。
彼とは、距離感を間違えなかった。
周りからはなぜ付き合わないのかとよく聞かれた。
彼は「結婚式に呼びたい人ナンバーワン」と私を称した。
私は「世界一幸せになって欲しい人」と彼を称した。
ある時私は彼の家で終電を逃した。