※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや
毎週水曜朝10時、「ハッピーエンドに殺されない」。
これは、「いつかお嫁さんになるのよ」と育てられ、姫と王子が結婚してハッピーエンドになる物語ばかりを見せられ、しかし、姫を欲望し、ドレスを裂いて王子と戦うようになった女であるわたしが、「いや、もう戦争をやめてえ。武器ではなくてペンを持ちてえ。人間は物品じゃねえ。奪い合いたくねえ。自分の物語の続きは自分で書いていきたいもんじゃねえか。なあ?」ってなりながら6年間書き続けている人生相談連載です。
こちらでは「読者から寄せられる個人の悩み事に向き合い、それを引き起こしている大きな構造を解き明かそうとする」っていう作業をやっています。「これはこういう仕組みの中で起こってると思うんですけど、どうしましょうね。わたしは上からアドバイスしたくないので、横で一緒に考えますね、決めるのはあなたですよ」って。
というわけで。
欲望、解明、試みましょう。今回ご紹介するのは、「男性器とされるものがついていない女の体を生きているが、男性器をもって男を抱きたい」「フェムドム(セックスにおいて女性が主導権を握るプレイ)とかじゃなくて、マジで、男として」という欲望のお話です。早速投稿文を読んでいきましょう。
性欲について、自分では抱え込みきれず誰かに吐き出したくなってしまう時があるのでこの場をお借りして牧村さんに話させてください。
私は女です。 恋愛対象は、女性も男性どちらも。女性を好きになった経験もあり、男性にも興味があります。
本題に入ります。 近頃、男性を見ていると抱きたいという感情が芽生えてむしゃくしゃしてしまうのです。 ペニバンを付けてだとか、女性に抱かれたい男性と致すだとか、そういうものではなく『男』として男性を抱きたいのです。 性別が女、身体が女であることは変えようがないので現状どうしようもなく、とても苦しいです。
去年、歳が一回り離れた男性を好きになりました。彼は異性愛者で結婚願望を持っていて、将来のことを家族のことをよく話しています。 私は彼を頭の中で抱くのが毎晩の日課で、男である自分によって快楽に溺れている彼の妄想が何よりも興奮出来るのです。ですが彼に対しての欲が強ければ強い程後から襲ってくる虚しさも多く、自己嫌悪も酷いです。 そんな毎日が続いています。 好きで好きで堪らなくて、でもどうすることも出来なくて。どうしたらいいんでしょう。
(が、それでもいらんこと言うやつはいそうだなと思うので、あらかじめ腹の底から野太く可愛く吠えておきます。ワオンッ🐺)
……あなたが、あなたを、罰さなくてよかった。
まずはこの、空想の力、「現実で充足できてない欲望を空想の世界に放つ」力を、わたしは、たたえたいと思います。
これが自分でできなくて現実の人間を同意なく対象としてしまう行為が、マジでシンプルに犯罪かつ依存的であるがゆえに決して自己を満たすことができないブラックホールなのであって、最近だと「女性陸上アスリートを赤外線盗撮するやつ(参考:Newsweek)」とか「男性アイドルに卑猥なメッセージを連投し続ける触法レベルの厄介なやつ(参考:ちょっと言いにくい情報源)」とかがそれにあたるものであり、今からでも遅くないから悔い改めてほしいと思うのですが、あなたはそれをやっていないわけで。空想界における男体化能力を磨き上げているわけで。それはマジで素晴らしいことだと思った。
もう、いわば、イマジナリーちんちんを獲得しているわけでしょう。空想界におけるイマジナリー性器の獲得、もっと各自頑張る価値があることだとわたしは思ってますよ。
そりゃあ社会やってくシステム上では女とか男とかあらかじめ分類されますけれどもね、われら、
要するに人体で生きているので。
あらかじめ分類された用語で言えば、「陰茎/陰核」「前立腺/Gスポット」が、それぞれ相同というか、もとを辿れば同じものでしょ。「陰茎の快楽を味わいたかったなぁ😢」という人も陰核を刺激すれば、「Gスポットの快楽を味わいたかったなぁ😢」という人も前立腺を刺激すれば、空想界からリアルに迫ることができるわけです。それは現実界からリアルに迫るルートよりも、かえって思い通りになりやすいんですよ、だって自己完結できる空想だから。イマジナリー性器、状態もサイズもあらゆることが自由自在だからね。「もう無理」とか「ただただ痛くて不快」とか「思ってたんと違う」とか、そういうことが一切ないからね。
ってことでまずは、「女だからどうしようもない」とおっしゃるあなたへ、「どうしようもなくなくない? すでにどうこうしてるじゃん」というお話でした。おめでとうございました。
ここからは、うーん、この言葉をググると現状政治的な話しか出てこないのですが、しかしだからこそあえてこの言葉を使う。あのね、
「主権回復」の話をします。
話の初めに、ちょっと考えてみてほしいです。
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