「無理!!絶対に無理!!私これ以上いけない!」
公園の取り囲む異様な空気に、私は先に進めなくなった。
私が初めて心霊スポットに行ったのは夫と結婚する前だ。結婚前ということは15年以上も昔のことで、おそらく私が21歳くらいだったと思う。当時付き合っていた彼氏がホラー好きで、心霊スポットに行きまくる男だった。心霊スポットを見るために住んでいた千葉県から北海道まで出かけてしまう人だった。そんな彼氏と共通の友人が関東に遊びに来ることになり、3人で遊ぶことの1つに心霊スポットが入っていたのだ。
私自身はホラー系やスプラッタ系の作品を楽しめる変わり者である。そのため、人生初の心霊スポットに遠足気分で楽しみにしていたのだ。
行き先は、彼氏の地元である千葉県の某市内の公園だ。彼氏の情報によると、夜にこの公園の中を通ると、ズズズと人が地を這いずる音が聞こえてくると言う。その音は、戦争で苦しんでいた人が這いずる音だとか、戦で戦った武士の怨霊が地を這いずる音だとかなんとか言っていたように思う。
その日は、千葉まで来てくれた友人を駅で回収し、彼氏の車に乗り込み、ファミレスで夕飯をとった。心霊スポットに行くのによい時間になるまでファミレスで暇を潰すことにした。
心霊スポットに行くのによい時間っていつなんだろうね。おそらく丑三つ時と言われている深夜2時だろう。しかし、私たちはそれよりもだいぶ早い22時ぐらいにそこに向かった。確か「住宅街にある公園だから深夜に公園でワイワイしていると通報されかねない」という現実的な理由だった気がする。
夜の22時に公園の駐車場に到着した。公園は住宅街の中にあり、入り口も見た限り小さい。一般的な小さな公園のように感じられ、見る限り怖さはなかった。中に入ると、公園は想像以上に大きかった。左手に小さい子が遊ぶ遊具広場。右手には小高い丘があり、その先に雑木林があった。
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