バイト先のクズで有名な先輩が、セフレから昇格させた彼女が重くてまたセフレに戻った、と言っていた。ただしんどいだけじゃんね、と先輩が耳打ちしてくるのにわたしはわざとらしく大きく頷いた。
普通の恋人たちはある程度の期間付き合って一緒に住み始めてしばらくするとセックスすることがなくなったとか、異性として見れなくなったとか言うけれど、わたしたちは逆だった。
セックスだけを残してそれ以外がまるっとなくなった。
デートも外食も、いっしょにソファで映画を観たりすることもなくなった。
仕事が終わったらそれぞれご飯を食べて、家に行く。
三十分くらい無言でテレビを観たあとは、自然な流れでベッドに入りセックスをする。
お風呂に入って、すぐに眠って、朝はそれぞれの出勤時間に合わせてバラバラに家を出た。
そんな関係が半年くらい続いた頃だったと思う。
セフレの家に泊まった日、昼過ぎに起きてランチを食べに外に出た。
映画を観て、欲しいと言っていたサボテンを探しに行った。
「このまま今日も泊まる?」
「うん、そうする」
恋人といるときより恋人っぽいことをしてる、と思った。
だったら、恋人なんて名前はいらないんじゃないか、と思った。
「わたしたちさ、セフレになるのはどう?」