※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや
相談者の文章がすごいシリーズ、「男です。男社会がしんどいです。」に続く第二弾がやってまいりました。
毎週水曜朝10時。「姫と王子が結婚して幸せに暮らしてこそハッピーエンドだよ」っていう物語に人生押し込められたくねえな、と申し上げている本連載、「ハッピーエンドに殺されない」なのですが。
特にコロナ以降、「自分を貫くのに疲れました。結婚したい。」というようなご相談が複数寄せられております。
しかしながら実際問題、「男は年収💰女は若さ👩」みたいな異性愛繁殖場文化(読み仮名:ドヘテロ・ブリーディング・カルチャー)(今ここで思いついたからググっても出てこないやつ)が無理すぎるがゆえに異性婚しようとしてなかった人が生活の不安で異性婚しようとした結果、「えっ、趣味、競馬なんですかあ?😅」「もう少しふんわりしたメイクのほうが……😅」みてえなひでえ目に合わされて「ヘテロ文化無理すぎて無理」ってキレているのに引き続きシングルな生活は不安。っていう、いわばヘテロ・オア・デッド状態でゾンビ化している方々を多くお見受けします。
結婚、自分が選んだハッピーだと思えるなら、そりゃハッピー。しかし……これは一体、「結婚したい」のか「結婚しなきゃ」なのか?
今回はそのようなお気持ちを、「ハッピーエンドに殺されたい」と、真夜中のメール+真夜中に送ったことを後悔したメールの2本立てでお送りくださった方のお話です。迫りくるリアリティ。2本一気にお送りします。
※注意 希死念慮(死にたい気持ち)にまつわる表現があります。これについて最近具体的に何かを実行した方の、何かに引っ張られそうな夜にはお勧めしませんが、“実行まではしてない死にたさ”を抱えた方には多分響き合う何かがあると思う、たくましい終わり方をする投稿文です。
私は、お恥ずかしながら(?)コロナ禍で寂しくなって婚活を始めてしまった感情の奴隷です。
寂しさ一本でやらせていただいています。
婚活というのは圧倒的にヘテロ優位なので、なんとかヘテロやっていこうと思いましたが、いろいろあって早々に「いや女性と結婚したいんじゃい」とキレてしまいました。
牧村さんのcakesはこのタイトル、このテーマなのに結婚前提夢見がち女の相談ですみません。
でもどうしても、規範の再生産であろうと、私の願望は同じ価値観の人を見つけて、死ぬまでに女性二人でウエディングドレスを着て指輪を交換してフォトを撮ることなのです。
親にも紹介したいです。
ハッピーエンドに殺されたいのです。
これ自体私に刷り込まれた呪いなんじゃないかと考えています。
のちに脱婚することがあるとして、それも承知です。
そんな私が「女性×女性の婚活はないんかい」と探したら、ありました。
しかし何となく違和感を覚えるのです。
「LGBTの方」という言い方、「人を愛するのに性別は関係あるのでしょうか」というそれはそうなんだが昔どこかで聞いたような謳い文句、正しいことをやってあげている感……何となく不信感を抱いてサイトをそっと閉じてしまいました。正直コロナ禍で何度も、本当に何度も死を考えたのですが、こうなったら恋愛結婚をやってやるとハイブランドのメイク用品を通販したら生きる気力が湧いてきたので、ここで諦めたくありません。
このコロナ禍で同性と出会い、zoom通話などで距離を詰めるのに、私は何をすればいいのでしょうか。
やみくもに欲望を肯定していないで現実を見て、自分の呪いを解いて、一人で生きていく作業を試みるのが先でしょうか。
手詰まりになってしまいました。
そこそこ愛情と金をかけて育てられた産物が夜中に恋人がほしくて泣き出す大人だという現実も、もうこれが私なので親に申し訳ないとかはないのですが、情けなくて仕方ありません。結婚したいです。
ここからは蛇足なのでもし採用されたら省いていただいて構わないのですが、真面目にまず恋人を作るとしたらどこに行けばいいんでしょうか!?
大都会のレズビアンバーでしょうか!?
過去の記事が多すぎて読みきれないので、もう書いてあったらすみません!!
最後かわいすぎて省けなかったです。
2通目行きます。
昨日の深夜にメッセージを送った者です。
昨日はかなり混乱した、わけのわからないメッセージを申し訳ありませんでした。
かなり破滅的になっていて、自分でも何を書いたか半分覚えていません。そんな文章を心ある生身の人間宛に送ってしまって、反省するばかりです。
牧村さんに届かないにしても、cakes編集部の方は目を通すと思いますので、お詫び申し上げます。
仕事の先行きが見えなくなり、不安への対症療法として、自分に必要ではなかった男女向けの恋愛に関わったことで、何かが破裂してしまったのだと思います。
ただハッピーエンドに殺されたいというのは本心で、これは渇望する何かを成し遂げてあとはなにがあっても大丈夫、生死の観念を取っ払った理想郷に至りたい、の言い換えなんだと思います。
それが私にとっては心からの相思相愛の獲得で、自分と相手を縛り付ける一時的な契約なのだと思います。社会に与えられたハッピーエンドで死にながら諾々と生かされたいのではなく、もぎ取ったハッピーエンドで他の死の可能性を焼き尽くしたいのです。
そもそもこの社会はハッピーエンドすら与えてくれないので、お前たちにバッドエンドを押しつけられるくらいならお前たちを殺すという方向に行きそうで怖いのですが……
私は「そのままの君でいいんだよ」系のメッセージで楽にならないどころか舌打ちをしてしまう方の人間です。
聞いていただきありがとうございました。
遺書みたいになってしまいましたが、なんだかんだ死なないので大丈夫だと思います。
(以上、2500字あった相談文を泣く泣く1500字に編集してお送りしました)
(あと、牧村朝子の連載では、相談文を本人が全部読んで選んで編集しています)
「結婚したい」って、深層的には、しばしば「死にたくない」の言い換えなんですよね。
生活の支え合い、老後の不安の解消、たとえ自分が死んでも子々孫々が続いていくんだな~という、
血を託す感じ。
しかしですね、生命、自分以外は自分をやれないんです。そして自分って、いつか必ず死ぬんです。そのことを自分で受け入れた上でMAX自分をやっていく、いわゆるメメントモリな姿勢で自立することができないままに、死にたくなさを愛って呼んで血縁で自分の血ぃ託しちゃうような家族形成やっとると、大体アカンことになりますね。「ママの叶えられなかった夢も我が子ちゃんにならきっと叶えられる」ママとか、「同性愛だなんて親不孝め、孫の顔はまだか」パパとか、あとパートナーに対して「私の言う通りにしろ」がやめられない人とか。ひゃっひゃー。お前以外お前じゃないぞ!
ま、そういう人々には各自でメメントをモリしていただき、各自で自分をやってっていただく以外ないので、今回は放っておきます。「愛」ってキレイに言い換えやすい「死にたくなさ」に比べ、社会的に承認を得にくい、
破滅的欲望についてです。
いや、安心しました。2通にわたる「死にたくない」を綴っていただいた結果、最後にちゃんと「お前たちを殺す」が出てきたので。もちろん実際殺すと法的にも倫理的にもアウト、あと、根本的に、人を殺さないと実現し得ない思想って思想として弱すぎるよなって思うので、「オッケー殺そ!😉」とは絶対言わないですが。その代わり、このように申し上げますね。
よ~し、滅ぼそ!😉
あなたはまず、「自分が欲しい物語に出演者を募集しなくていい自分」「可哀想ね~って手を差し伸べてくる奴らに、“てめえがヒーローになるためにご自分よりもお可哀想な誰かさんを募集してんじゃねえぞ”って言い返せる自分」目指していくのが一番安定しそうだと思うんです。