「長男の部屋は俺がもらう!!」
そうブチ切れた次男は、長男の部屋を強制的に占拠し奪い取った。それは長男が中2で次男が小6、救急車事件後、冬になろうとしている時期だった。
我が家は、一軒家とは言えオンボロの古い家屋で、とにかく狭い。2階は6畳の和室に、4畳と4.5畳の洋室2つだけだ。和室は夫婦の寝室、4畳の洋室はエアコンがなく人が住むには難しいのでほぼ納戸として扱われ、子どもたちの部屋は4.5畳の洋室をあてがっていた。
4.5畳というと、ピアノと2段ベッドを置くだけで遊ぶスペースがほとんどなくなるほどの狭さだ。部屋への間口も狭いのでピアノをこの部屋に入れるときはクレーンを使って窓から無理やり入れたくらいだ。
子ども部屋といっても、長男と次男は2人とも昼間は1階の居間にいたがる。常に家族の側にいて、ずっと何かを喋っていることが多くて、寝るときとピアノ弾くときしか使っていない状況だった。
ただその寝るときが問題で、いつも喧嘩になっていた。
「長男が一緒に寝てくれない」
怖がりの次男は誰かと一緒に寝たいのだ。親よりも大好きな長男と一緒に寝たくてしょうがない。しかし寝るたびにテンションが上がるので長男が寝ようとしているところをしつこく邪魔してしまう。すると、長男が「お前と一緒に寝ると面倒!!」と怒り出すのだ。
渋々一緒に寝るのを諦めると、今度は寝る場所問題が発生する。
「長男が二段ベッドの上ばっかりとる」
兄弟の力関係で言えば、兄が強くて弟が弱い。我が家の男子たちも同じ力関係ゆえに、次男がいつも貧乏くじを引く。次男は隙間が怖いらしく、二段ベッドの下段よりも上段で寝たいらしいのだが、長男はただただ上段で寝たいので次男を下段に追いやるのだ。
——もう、お母さんはなんでもいいよ。
と、思いつつもいつも2人の喧嘩の仲裁に入っていた。私自身が3姉妹の姉で子ども時代は我慢させられてきたということもあって、兄だからと言って長男に我慢させるというのはあまりしたくなかった。それゆえ最終的には次男は和室で私たちと一緒に寝ることになったのだ。
問題はこれで解決したかに見えたのだが、長男が1人部屋になることには大きな心配があった。
なぜなら、長男は片付けが壊滅的にできないからだ。
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