【登場人物】
清田隆之
桃山商事・代表
1980年生まれの文筆業
森田雄飛
桃山商事・専務
同じく1980年生まれの会社員
ワッコ
桃山商事・係長
1987年生まれの会社員
生理にまつわるヤバすぎる認識
清田 桃山商事の恋バナ連載、今月は「生理」をテーマに語っていきます。
森田 男である清田と俺にとっては、チャレンジングなテーマです。
ワッコ 男性が生理について語るのって、ほとんど聞いたことがないかも。
清田 我々男性にとって「生理のことは、体感としてはどうしてもわからない」というのが大前提ではあるんだけど、あまりに知らなすぎるのもやばいのではないかという問題意識のもと、7年ほど前にpodcast番組でこのテーマを取り上げました。
森田 当時、周りの男性に取材したら、生理のことを「セックスができない日」くらいにしか認識していない人が多かったよね。かくいう自分も、そのときにいろいろ調べて知ったことがほとんどだったんだけど。
清田 俺もまったく同じで、『月経のはなし - 歴史・行動・メカニズム』(武谷雄二、中公新書)という本を読んで勉強し、初めて知ることが多すぎて反省しました……。この本の帯には「毎月1回×平均5日×約42年=2500日を占める、男女最大の格差」という衝撃的な言葉が書かれているんだよね。
ワッコ 数字にするとエグい。
森田 多くの男性は、その実態を知識としても知らずに生きている。見ようとしていないという側面と、男性からは見えづらいという両面があるとは思うんだけど。
清田 最近だとソフィが展開している「#NoBagForMeプロジェクト(清田もメンバーの一員として参加しております)」のように、生理についてオープンに語り合おうという流れも生まれてきている。一方で、少し前に花王の生理用品の広告がネットで炎上したという事案もあった。
森田 「生理を個性ととらえられれば、私たちはもっと生きやすくなる」というコンセプトで、女性同士の相互理解を促すような内容だったよね。炎上を受けて、そのプロジェクト自体が中止になったみたいだけど。
ワッコ あれヤバかったですよね。女友達の間でも「これはちょっと……」となりました。
森田 ワッコたちから見て、どういうところがヤバかった?
ワッコ 個性とか言ってるけど「そんないいもんじゃねえよ!」っていう。あとは何より「まずは女同士でわかりあって」というコンセプトなのがイヤでしたね。そうじゃなくて、会社や社会に生理のつらさとかを理解してもらいたいから、「男性にわかってもらう方がよくない?」という話になりました。
清田 あの広告が炎上している問題やポイントを、男性はイマイチ理解していないという構造もあったように思う。
ワッコ 炎上の流れで「一生で生理用品にかかる費用が50万円」みたいなニュースがtwitterで流れてきたんですけど、それに対して「これって男でいうと、毎回くる性欲に対して使ったティッシュ代やレンタルAVの代金の話してるのと同じ理屈じゃないの?」とかいうツイートがあって、マジでクソリプだなと。「俺たち『には』性欲がある」って言ってるけど、そもそも女にも性欲はあるし……女には性欲がない前提なのが終わってる。
清田 映画化もされて話題になった漫画『生理ちゃん』でも「性欲くん」というキャラクターが設定されていて、批判の声があがっていた。女性の生理に対応するものとしてなぜ男性の性欲を置くのか、そこは個人的にもめちゃくちゃ謎だった。
森田 性欲は痛みを伴わないしね……。
ワッコ 射精なんて気持ちいいだけじゃないですか! 生理って快感とかマジで1mmもないから! 100%の不快しかないから!
清田 「自分ではコントロールできない生理現象」みたいな意味で並列させているんだと思うけど、まったく違うものなのに真に受けてしまう人が一定数いるというのは、端的に言って男性が生理のことを知らなすぎるからだよね。
森田 知らないどころか誤った認識を持っている人も多い気がする。ニコ生番組でこのテーマを扱ったときには、女性からの投稿で「プールに誘われるも『生理中でムリ』と伝えたら、生理は尿意のようにコントロールできるものだと思われていたと判明した」というのがあった。
清田 これおそらく、おしっこのように股間にグッと力を入れると経血が出なくなる……みたいな認識だよね。
ワッコ 話にならないですね。
森田 これもニコ生への投稿で、「にたまご」さんという40代女性は「学生のとき、男友達に『毎日ヒゲ剃るのと、月一で生理来るのとどっちが面倒かな?』と聞かれ、あまりの無知さに驚き呆れて何も言えなかった。20年たった今でも思い出すと腹立たしい」と書いていた。
ワッコ 比較対象がバグってる……。
清田 生理に限らず、女の人が「こういうことが苦しいし、辛い」と言ってるときに、「それを言ったら男だって〜」と持ち出す謎現象は一体何なんだろうね。しかもそこで持ち出される事柄は、まったく比較になっていない頓珍漢な内容であることがほとんどで。
ワッコ 対抗馬として弱いですよね。射精とかヒゲとか、弱え!
森田 対抗馬弱い問題(笑)。
ワッコ それに、女も脇毛とかムダ毛とか毎日剃ってるんで! 男のヒゲだけが特殊だと思わないでほしい。そういや学生の頃に男友達とやよい軒で定食食べてたら「ワッコも腕毛とか生えるの?」って聞かれたことがありました。女の体には体毛が生えないと思ってる男性が現実にたくさんいるんですよ……。
「生理は甘え」という感覚の謎
森田 あと、恋人や元カノの生理事情を、自分にも適用してくる男性に対して憤っている人も多いみたいで……これもニコ生への投稿です。
「俺の彼女は3日目からはケロッとしてるよ」「元カノは薬を倍量飲んで頑張ってた」など、生理が軽い人や、してはいけないことをしてまでがんばる人を過去に見たせいか、身近にいる私にも同等のがんばりを強いてきたり、今日はもう大丈夫な日だと断言されたりする。私の身体なのに好き勝手言わないで、と思いました。
清田 これもすごい話だよね。自分が知ってる数少ないサンプルを「生理のスタンダード」だと思い込み、偏った認識を持ってしまっているうえ、それを元に生理で苦しんでいる女性を抑圧までするという……。ヤバすぎる話だけど、こういう話が少なくないのが恐ろしいところで。
森田 他にも、「女性にも自分を基準に他を否定する人はいるが、他人の体調に口を出してくるのは男性が多い。自分のパートナーや家族のみを根拠に、なぜ他人の体を否定できるのか、意味がわからず怖い」という声もあった。
ワッコ こういうの、「お前が聞いてなかっただけだろ」って思うんですよ。生理のことって仲の良い女友達にもあまり話さないくらいだから、彼氏に「辛い」とかそんなに言わないじゃないですか。しかも「軽さ」だって人によって違うし。
清田 これって、逆は絶対言わないと思うんだよ。