大人っぽさが維持されているのは大人なのか
かつての大人気子役が、すっかり大人になった様子を見かけて、「えー、〇〇くんがもう高校生だなんて!」「えー、〇〇ちゃんがお母さんになるなんて!」と驚くのが通例だが、大人になった当人は毎日のようにその声を浴び続けているのだから、相当なストレスに違いない。たとえば、会うたびにこの手の発言を告げてくる親戚のような人たちと、毎日会うことになったと想像すると、たちまちしんどい。「抜群に可愛い」子役が成長すると、「今でも可愛い」に移り変わっていくのが、「抜群に」と「今でも」の差異を探り始めれば、大人社会への邪念も噴き上がるはず。だが、それを表立って言う機会は用意されない。人生の初期段階で始まる減点方式って、どう考えても体に負荷がかかる。
『ボクらの時代』(フジテレビ系・9月13日放送)に、鈴木福・加藤清史郎・濱田龍臣という、かつての子役たちが登場した。免許をとったとか、ビールを飲んだとか、恋はしているかとか、視聴者に「えー!」を与えるコメントを重ねていたが、そういったサービストークと離れたところで、加藤の口から注目すべき発言が出た。「反抗期はなかったけど、(尾崎豊が好きだったので)盗んだバイクで走り出したかった」と述べた後、「盗んじゃダメですけどね」と添えたのだ。暴走族経験を持つ芸能人が「交通ルールは守りましょうね!」と騒ぎ立てるのとは違う。加藤は、バイクを盗んでいないのに、バイクを盗んではいけません、と言っているのである。子供の頃から、大人が欲することを口にしてきた職人芸が体に染み込んでいた。「大人になった!」ではなく、「子供の頃から培ってきた大人っぽさが大人になっても維持されている!」というのは、大人なのだろうか。我ながらなかなか壮大な問いである。
「裏切ったわけではなく、見えなかった部分が見えただけ」
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