※「フェル先生のさわやか人生相談」は、noteの定期購読マガジン「週刊フェル」にお引越ししました。詳細は記事の最後をお読みください。
私の全ての苦しみは、無意味なのではないか?
フェル先生、はじめまして。いつも楽しく拝読しております。この度、どうすれば自分の人生を愛せるか分からなくなってしまったので、相談させてください。
私は貧困の中、父から殴られながら、精神病の母の世話をして育ちました。助けを求めようとも私を愛する大人がいない中、気が触れそうな毎日の中で感情を殺し生きてきました。
私は30過ぎまで、なかなか自分のために生きることができませんでした。10代の頃から稼ぎ、それに加えて奨学金を得て大学に行けました。20代で虐待によるPTSDを発症し、治療しながら大学院を卒業し、今もPTSDを抱えながらもなんとか研究をしています。
30過ぎて結婚し、夫に恵まれ、初めて安全を知ったことから、自分の意志や感情を大切にすることを学びました。夫には感謝しています。
ただ、ある先輩に出会ったのですが、その先輩を通して、自分の人生の痛みや苦労を全て無意味に感じてしまうようになりました。
先輩は下に優しく(甘い)方で、かつ非常に優秀な方です。普通なら怒るような事も許し、バックアップをし、相手と自分との関係の中でwinwinになるポイントのみに集中できる方です。
私の生い立ちでいったら、どんなに酷い罰を受けたろう……とフラッシュバックするような事に対しても、温かい目で見守ればいい、というスタンスで、相手に安全と援助を与えて伸ばします。
初めは優秀ではなかった後輩も、無礼すぎる後輩も、先輩の元についた人は自由と安全を与えられ、適切なバックアップも受け、高い成果を上げています。私も先輩に助けられたことは多いですし、尊敬しています。
先輩の世界観や生い立ちを聞くと、私と真逆なのです。
私は、自分は存在してはいけない、という思考が根深く、今も普通に生活するだけでも自分への罵倒が絶えず浮かび、PTSDにも苦労しています。
しかし先輩は、愛と保護に恵まれて育ち、ご兄弟も皆、素晴らしいエリートです。かなり自由に育ったそうです。また、自分がそこに存在する事が何かしらの利益になる、という前提を持っています。
その時、なぜ私は虐待を受けてきた? なぜ母の世話をしてきた? なぜ何をしても罰を受け続けた? なぜ何年も自分のために生きられなかった? なぜPTSDを抱えている?
その全ての苦しみは、無意味なのでは?と感じてしまいました。
自分の為に生きることができなかった事については、たしかに自己責任の面は多いです。虐待や母の世話が当たり前になってしまっていて、自分を幸せにする権利も方法も知らなかったから。自分の命や意志に価値があると思わなかったから。価値をつけるよう、戦ってきました。
しかし、先輩にはそのような世界すら存在しないのです。なぜ私は、戦う必要のない事に戦ってきたのだろうと。どんなに保護や愛や自由が欲しかったか。どんなにPTSDがしんどいか。全て無意味だと突きつけられた気がして、打ちのめされています。
この世は、理不尽な事は多いです。自分を幸せにするのは自分です。私は先輩ではないから、自分にある幸せを大切にするしかない。そう言い聞かせてはいます。
先輩は確かに素晴らしいです。見習うべき点が多いです。だけど、とても悲しいです。人生の全てを損した気になります。
どのように考えていけばいいのでしょう。長文になりましたが、どうぞよろしくお願いいたします。
(35歳、女性、研究職、まみたろう)
A.当「フェル先生のさわやか人生相談」は、今回でめでたく連載400回目を迎えました。このような長期連載が実現したことは、ひとえに読者諸兄諸姉のご支持の賜物であります。ありがとうございます。ご愛読感謝です。
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さて、宣伝は大概にして、今週のお悩み相談へと参りましょう。
今回の相談者は35歳の女性です。経済的に困窮した家庭に生まれ、父親から受け続けた殴る蹴るの理不尽な虐待、更には精神疾患を抱えた母親の辛い介護。それでも歯を食いしばって耐え抜いて勉学に励み、奨学金を獲得して大学院まで卒業した。そして立派な研究者になった。「努力」「忍耐」「辛抱」は、あなたのためにある言葉ですね。曲がらず踏み外さず、よく頑張りました。