不安じゃないからといって安心しているわけではないので、僕らは旅に出られない。

遠投を軽々と、受けては返す受けては返すを繰り返す。まるで、肩の強い外野手同士のキャッチボールのような交換日記です。蘭ちゃんの刺すようなレーザービームを正面から受けて、珍しく、サクちゃんからも相談事が返ってきました。そうこなくっちゃね。連載第26回は例のアノ活動を再開したサクちゃんのターン。毎週火曜日更新。自分へのご褒美、大事ですよね。

蘭ちゃんへ

こんにちは!

8月があっという間に終わり、気がつくと普段とはちがう生活がはじまって1年の半分が過ぎました。

今年は春も夏も特別な思い出はつくれなかったけど、こんなに毎日の気候や空気や植物の細かな変化を感じて、ただ時が無事に過ぎるのを待ち望んだことはないかもしれません。数年後にこれもまた特別な思い出になっているといいね。

蘭ちゃんは体調不良、大変だったね。回復しているといいのだけど。わたしも夏は苦手で毎年バテるので、できる限り自分のエネルギーの省エネを心がけているよ。つまりダラダラしてなにもがんばっていないよ。いや、むしろ休息をがんばっているのだ。

*ー*ー*

前回は「依存」についてのお話だったね。

「サクちゃんは、ヒト・モノに関わらず、依存してしまいそうなものってありますか?」と質問してくれたので、考えてみたよ。

振り返ると、いつでもずっと好きなもの(アイスとか)はあるし、ブームのようなもの(同じ作家の作品を一気読みとか)はあるけれど、「依存」かというと、そうではなさそうです。「うっすら長くじんわり好き」か、「通りすぎる好き」のいずれかで、依存するほど夢中になるとか没頭するということがありません。

わたしはたぶん「依存」ができないのだと思います。「依存しないように気をつけている」のではなくて「できない」。わたしにはその力が足りないと感じています。

依存しないのは一般的にはいいことかもしれないし、蘭ちゃんが書いていたように少しずつ分散して依存しているとも言えますが、どちらかというとむしろ欠損のように捉えています。

*ー*ー*

依存しないとどうなるかというと、「ひとりでできるもん」になります。なんでも自分でやるのが当たり前で、なかなか人に頼れなくなります。それから、何かに夢中になって我を忘れることはなく、いつも冷静に観察し、判断できる状態でいようとします。

数年前に自分がそうなってしまっていることに気がつきました。

自分でなんでもやろうとする、ひとりでできないといけないと考える、人に頼れない、などに対しては、どうしてそうなってしまうのかを知って、考え方や行動を変えることで対処しました。

具体的には、努力で「人に頼る」を意識的にやってみて、新しい習慣をつけました。

「ひとりでできるもん」では、できたとしても自分ひとりの範囲から出られないけれど、誰かの力を借りたり組み合わせることで、できる範囲がひろがります。お互いに拡げ合うことができるのはとてもうれしく、いいことがたくさんあるので、継続によってその習慣を身に付けることができました。

これは「自力本願、他力サンキュー」そのもので、この「自分も他人も役割を活かしあう」という考え方から「夢組と叶え組」という言葉も見つかりました。

依存の中の「ヒトやモノに頼る」という部分は、もともとはできなくても、意思決定である程度得ることができたような気がします。

*ー*ー*

蘭ちゃんは「ひとつのものに依存しすぎないように気をつける」と書いていました。

たとえば、恋愛でひとりの人への依存がつよくなるのは「不安がつよい」が先にあるのだと思います。

「いなくなるかもしれない」「いなくならないでほしい」という不安に対して、相手に「いなくなりませんよ」と証明してほしい。すると、「不安がつよい人」と「助けてあげたい人」の極端な役割でバランスを取り、需要と供給がマッチします。

ただ、その役割で居続けることがしあわせかどうかはわかりません。ドラマのようにヒロインとヒーローでいられる劇場型の恋愛を好む人もいるし、それが心地良い人もいるのだろうけど、まあ疲れそうです。

でも、はじめは「いなくならないでほしい」という不安があったとしても、いつまでも続くものではなくて、時間とともに「別にいなくならないのだな」と安心できるようになると、相手を縛るような依存から、健全な依存へと移行するのではないでしょうか。

健全な依存は、自分以外の頼れる人がいることで、安心して外の世界に出ていけるし、帰るところがあるから、外の世界を広げられる。お互いにそういう存在になれるのなら、共依存もいいものです。

「安心な僕らは旅に出ようぜ」と歌ったのは「くるり」ですが、不安な人は旅に出られず内にこもってしまうので密室化になりやすいのですよね。

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サクちゃん蘭ちゃんのそもそも交換日記

土門蘭 /桜林直子

東京でクッキー屋さんをしている「桜林直子(サクちゃん)」と、京都で小説家として文章を書く「土門蘭(蘭ちゃん)」は、生活も仕事も違うふたりの女性。この連載は、そんなふたりの交換日記です。ふたりが気が合うのは、彼女たちに世界の「そもそも」...もっと読む

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mugiiiitaroos これメンタル不調沼にはまるとなりがちな思考だ。 “「大事にされたい」と願ってもよいはずが、欲が出ないようについたクセのせいで「大事にされなくても仕方ない」と思える人や場所を知らない内に選びがちだという点です。” https://t.co/DCab 3ヶ月前 replyretweetfavorite