ぼくはあなたに何も言えない

相談文を読んで、たくさんの人にその悩みを読んでほしいと思ったと幡野広志さんは言います。みなさんも、まず相談文を読んで、あなただったらどう思うのか考えてみてください。

※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム(匿名可)からご応募ください。

いつもご投稿拝見しております。
誰でもよかったのではなく、幡野さんなら「子供が嫌いな親はいない」とか「あなたが意固地なだけじゃないか、素直になったら」等、通り一遍の言葉は寄こさないだろうという下心があってこれをお送りしています。「子供が嫌いな親はいない」等の言葉を使うなとお願いしているわけではなく、私に幡野さんの言動を縛る権利は何一つありません(申し上げるまでもないですが)。
他の方の質問と比べて、途方もなく長く、悪意のこもった質問になりました。
もし読んでいただくとしたら、大変なご負担を強いると思います。

父と母は学生時代の一時の勢いで安全では無いセックスを行い、幸せな家庭が築けると安易に信じて所謂「できちゃった結婚」をし、当たり前に結婚生活が破綻して、私が残りました。

悩みというのは、「上記のことが、20も過ぎて社会人になりだした今になって怒りの種になっている事」です。
今まで何も考えずに生きてきたのですが、ここ数年で、父と母の行いが酷く馬鹿らしく思えて嫌になってきてしまいました。

父は離婚前からうつ病を患っており、母も幼児であった私と父の世話に耐えかねたらしく精神病を患ったそうです。幼いころに彼らは離婚し、私は父に引き取られました。祖父母と同居し不自由なく暮らしていましたが、中学生の時にちょっとしたことから引きこもりました。その頃は父のうつ病がアルコール依存も手伝ってひどい状態になっており、自身のうつと娘が引きこもりであることが抱えきられない父、簡単な漢字すら書けないほど頭の働かなくなった私、どうしようもできない祖父母で家庭は崩壊しました。
実家に戻っていた母が私を引き取ることは無く、父方の親戚に面倒を見てもらい、大学まで行かせてもらい自分のやりたいように人生が生きられていると思います。

暴力を振るわれたことはありません。現在でも金銭に不自由はしていません。親戚一同から「あなたのやりたいようにやったらいい」と勉強することを認めてもらい、恵まれた環境にいます。その裏に、「まともな家に生まれたかった」と父と母に怒鳴りつけて周囲の哀れを一身に集めて、自分たちは必死に頑張ったんですという顔をしている彼らを加害者にしてやりたい自分がいます。

うつ病になった父は、私を引き取り、おそらく持てる限りの力を尽くして私を育ててくれました。それでも私は同時に、理不尽なことで怒鳴り私の話を一切聞かずに泣き出して自分の部屋に引きこもる父の機嫌をうかがう子供になりました。

母とは時折会うことが出来、そのたびに「あなたを大切に思っている」と直接的な言葉は無くても伝えてくれました。大学に行き始めてから、盛んに父がどれだけ駄目か語り、父方の家が私を奪ったと言うようになりましたが、母は離婚の原因が、母自身が幼児とうつの夫の重責から逃れたい一心で、結婚詐欺師と逃げたことにあるとは一言も言いませんでした。

人間関係に0:10の過失は無いと私は考えます。
父と母の行いの裏には、それを嫌だと伝えなかった、馬鹿みたいにふるまって気にしていない風に場を取り繕った、面倒だと思って口に出さなかった私がいます。
それでも、傷つきながら子供を頑張って育てたぞと、子供を大切に思っているぞと言う彼らを見ると、お前らは私をどれだけ傷つけたか考えもしないのかと喚く被害者面の私がいます。お前が気を遣う優しい子だと言った私は、怒鳴り声をあげて泣きわめくお前が恐ろしくて気を使っていたんだよ、お前達は「最低の人間だ」とお互いを非難するが、じゃあその最低の父と最低の母の間に生まれた私は何になるんだよ。私はお前たちが悲しんでいるときに気を使ったのに、お前たちは私が引きこもっても助けなかっただろう。責任もろくに取れない子供のくせに、自分のことしか考えられないくせに子供なんか作るなよ、一時の快楽に任せてセックスする無責任人間が混ざったのが私なのかよ。お前らは傷ついたと被害者ぶってるくせに、私を傷つけて再生産してることにすら気が付かないじゃないか、と思います。

幡野さんに言うべきことではなくて、父母をファミレスにでも呼び出して水ぶっかけてこれを言ってやればいいのですが、こざかしい私は実家からの援助がなくなったり、遺産の相続がなくなったら困るので言え(言い)ません。話し合いから逃げています。

大人としてのイニシエーションが出来ていないと漠然と感じます。
私は「守られるはずだった子供」という立場に縋り付いて、彼らと同じようにいつまでも被害者面がやめられません。私は最初から加害者でもあるのだと頭では分かっているはずです。人にはそれぞれの地獄があって、「まともな家庭」なんてものは隣の芝生にしか無いと分かっているはずです。

父にも母にも彼らの地獄があって苦しんでいます。
私は、私の地獄の責め苦は苦しいと誰にも言えない(言わない)ままここまで来てしまいました。それは私の過失です。

別に反出生主義ではありません。心の底からそう言えないだけで、生まれてラッキーと思うことはたくさんあります。

被害者意識を無くしたい、というよりも、父母との出来事に踏ん切りをつけたいのかもしれません(二人ともファミレスに呼び出して水ぶっかければ付くだろうと分かっているのですが)。

幡野さんと私は、この質問以外に関りがありません。
だから、真面目に考えてくれそうな第三者が、私の一方的な叫びを見てどう思われるのかが知りたかった。

本当に長くなりました。「何で幡野さんに言うんだろう」と私も思います。
誰かにこれを送ったという時点で私はかなり落ち着きました。ありがとうございます。

(子供女 成人済み 女性)

相談文を読んでぐったりとしました。自分が子どもの頃の親のことを思い出したり、親になった自分を見つめたり、自分の息子の将来のことをおもったり……。あなたの相談文を読んだ人のおおくが、少なからずきっとおなじような感覚になっているとおもうんです。

毎週たくさんの相談が届くのですが、なんであなたの相談を取り上げたかというと、たくさんの人にあなたの悩みを読んでほしかったからです。そして考えてほしかったからです。

この連載の感想でよくあるのが、「自分とは無関係なのに、ドキッとする」というようなものです。自分にも当てはまることだったり、身に覚えがあることをぼくが指摘していたり、相談者さんが書いているからだとおもうんです。

ぐったりとしたまま答えもわからないまま書き出しているので、けっこう困っていますが、あなたの悩みはドキッとしてズブズブとぼくは刺さってます。それはぼくがあなたの親と近い立場だからです。

経緯も環境も違いますが、がんという病気になりそう長く生きられないわけですけど、自分の子どもが成長していくとともに、子どもが必要とする愛情を、ぼくは適切に与えることができないからです。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。

幡野広志

写真家・幡野広志さんは、2017年に多発性骨髄腫という血液のガンを発症し、医師からあと3年の余命を宣告されました。その話を書いたブログは大きな反響を呼び、たくさんの応援の声が集まりました。想定外だったのは、なぜか一緒に人生相談もたくさ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

ettyGX メモ。 https://t.co/enV3T3JVW1 19日前 replyretweetfavorite

yoichish |幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。|幡野広志|cakes(ケイクス) 回答おもしろい https://t.co/6bx4XX3PgF 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

see_na >人間関係に0:10の過失は無いと私は考えます。 >私は、私の地獄の責め… https://t.co/ZFHXKleC9K 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

kyam1999 加害と被害の危うい境界線について。学ぶことが多すぎる。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite