純猥談

ただの「一度寝たことのある女」にはなりたくなかった。

秋の気配が色濃く漂う、大学4年生の11月。春には地元に戻り就職することが決まっていた。
その夜、ひとり暮らしのアパートにいた私に1件の着信が入った。


秋の気配が色濃く漂う、大学4年生の11月。
春には地元に戻り就職することが決まっていた。

その夜、ひとり暮らしのアパートにいた私に1件の着信が入った。

「今、サークルの奴ら何人かで集まってるんだけど、うちで呑まない?」

彼はサークルのひとつ上の先輩で、ジンさんといった。

大学院に進んだジンさんのアパートと私のアパートは、歩いて10分の距離にある。

本や音楽の趣味が合い、お互いお酒好きということもあり、彼は何かと私に声をかけてくれた。

映画で太宰治を演じた小栗旬とそっくりな、端正な顔立ち。 低い声に、笑うとくしゃっとしわのよる高い鼻。 面倒見の良い彼は、人たらしのお手本のような存在だった。

私は大学1年生の時から付き合っている彼氏がいたし、ジンさんにも年下の彼女がいることは知っていた。

けれど、あらゆることに淡白な彼氏よりも腹を割って話すことのできるジンさんと過ごす時間が楽しく、彼のいる集まりにはよく顔をだすようになっていた。

性的に惹かれていなかったといえば、嘘になる。

彼の涼しげな目元や長い指、細めなのにきれいに筋肉がついた腕を見るたび、自分の奥底にある欲望がチラッと顔を出すのは知っていた。

知っていて、気付かないふりをしていた。

だって、「仲良しの先輩と後輩」という関係を失いたくなかったから。

一度寝てしまったら最後、もう元の関係には戻れないということくらいは知っていた。


その日、ジンさんのアパートに行くと、彼の他に3名のサークル仲間がいた。 部屋の電気を消し、酒を飲みながら洋画をひたすら見ていたのだった。

私もそこに加わってから数時間後、私とジンさん以外の3人は終電があるだとか明日バイトで朝早いんだとか言って帰っていった。


部屋にはジンさんと、私だけが残った。

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誰もが登場人物になったかもしれない、現代の性愛にまつわる誰かの体験談が純猥談として日夜集まってきています。様々な状況に置かれた人たちから寄せられた3000件を超える投稿の中から、編集部が選りすぐった傑作を公開していきます。

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コメント

__mn__xo たまらんちですね https://t.co/HPaVjnVAcE 21日前 replyretweetfavorite

meiyue_xoxo なにこれ、めっちゃ好き。。 こんなふうになって欲しい男はとっくに誰かのものです。この歳になると。やれやれ https://t.co/pe30Ez5GOa 2ヶ月前 replyretweetfavorite

appscen モヤっとした話かと思ったらそうでもなかった 2ヶ月前 replyretweetfavorite