闇から救い上げられた言葉との出会い
出産と同時に長らくお休みしていた「パリジャン十色」。再開してからの内容は、私がフランスで経験した不妊治療や、妊娠中・出産時のお話をしていこうと思っています。いまでこそ子育てにどっぷりな日々ですが、まず出産にいたるまで、その道のりはなかなか大変なものでした。
いざ子どもが欲しいと思ってからの、子宮の問題(子宮腺筋症)や膵臓の腫瘍、甲状腺機能亢進症など、度重なる病気の治療。それを乗り越えて30 代半ばからようやくスタートできた不妊治療……。その過程では、日本人である自分の価値観がひっくり返されることが、いくつもあったのです。
連載再開2回目となる今回は、なかなか妊娠できず闇の中にいた私が、ハッと目を覚まされた、ある出来事を紹介してみようと思います。
なぜ子どもが欲しいと思ったのか?
そもそも私、とくべつに子どもが「かわいい」と思える人間ではありません。それでも、ばくぜんと将来子どもを持つことは考えていました。
30歳で世界婚活なるものをした結果、フランス人男性と結婚。その体験を一冊の本として出版したことで、ようやく仕事の区切りもつき、「子どもをもつ」ということへの一歩を踏み出せるようになりました。
子どもが欲しいと思った理由はまず、「子どもを育てるってどんなものなんだろう?」 という好奇心。
それに、平穏な夫婦生活だけれども、このまま続いてもなんだか手持ちぶさたに思える。子育ては、旦那さんと共同で体験する新しいプロジェクトとしては、ものすごくワクワクする気がする。といった、ぼんやりとしたものでした。
それがのちに「絶対に子どもが欲しい!」とまで思うようになっていくのですが……。
病気との戦い
さて、子供をつくろうと決めたはいいものの、なかなかうまくはいきませんでした。
私がフランスに住みはじめた30歳の頃、酷くなってきた生理痛で病院へいくと、「子宮腺筋症」と診断されました。この病気は妊娠しづらい原因になるため、将来子どもが欲しくなる時までピルで生理を止め、進行をゆるめるという処置をずっと続けていました。
いざ子どもを作ろうと決めてからは、ピルをやめ、数ヶ月後に妊娠しました。でも、残念ながらすぐに流産してしまいました。
それを機会に、健康診断もかねて血液検査をしたところ、膵臓に腫瘍があることが発覚。手術と入退院をくりかえすなかで、今度は甲状腺の異常がみつかり、摘出の手術をしました。
妊娠どころではなくなった数年間の闘病生活が落ち着いた時には30代半ば。さあ、今度こそ!と自然に妊娠をトライするけれども、なかなか授かることができません。
毎月やってくる生理痛はひどくなる一方。なんとか早く妊娠したいという気持ちで焦った私は、妊娠するための治療をしようと、情報を集めました。
あるドクターに言われた言葉
わらにもすがる思いで、パリ中の医者の予約をとっては会う日々のはじまりです(フランスでは病院だけでなく、個人開業の医者が多い)。