(連載休止中である2019年7月に届いた相談文より)
セフレにもなれなくなったら自殺してしまいそうで怖い
こんにちは、なんと連載が終わってから、知りました。
全部の記事を読みましたが、めちゃくちゃ心に刺さりました。
連載が終わっても相談は読んでいただけるとのことなので、お言葉に甘えてお送りします。
長くなりそうなので相談内容を端的にまとめると、 「23歳、好きな人の都合のいい女をしばらく続けることは未来に悪影響を及ぼすか」 です。
以下、経緯です。
好きな人がいます。去年の4月に同期入社しました。
去年の10月に仲良くなり、12月にセックスしました。私は付き合ってるのかな~と思ってました。
クリスマスイブも一緒にいてくれました。
でも年が明けて、今特定の人作る気ないんだ、と振られてしまいました。私はショックで怒り狂い、やり捨てじゃん!と叫んで帰ってしまいました。
1週間で反省し、なかったことにしようね、ごめんなさい、と伝えるため家を訪ねたところ、またセックスしてしまいました。
お前後悔しないの?これ?と何度も確認されましたが、もう好きだからなんでもいい、と思いしてしまいました。
だから、私はその後そういう関係を続けるんだと思ってました。
でも、それから全然連絡は来なくて、耐えられなくなった私は1か月後の、2月、飲みに誘って、帰りたくないと騒ぎ家にまではいれてもらいましたが、セックスしてもらえませんでした。
セックスさえしてくれないんだ…と2度目の失恋、みたいになり、めちゃくちゃ重いだろうなと思いながら、私は本気で好きだったんだけど、セフレでもいいと思った、けどそれもダメなんだね、と書いた手紙を渡しました。
当然のごとく返事はありませんでしたので、もう諦めようと思いました。
マッチングアプリの男とセックスしてみたり、仕事に関する勉強をしてみたり、残業を普段の月10時間から60時間まで増やしたり、土日休みなのに、土日にも出勤してみたりしました。
でもなんにも彼を上書きはしてくれませんでした。
そんな中、6月に入って急に彼から連絡が増えました。雑談ラインが毎日来て、なんだか私は半年前に戻った気分でうきうき返信してました。
そして7月に入って飲みに誘われ、終電がなくなり家に連れていかれ、セックスしました。それから、LINEは一切送られてきません。
気まぐれな人なんだなあと思います。セックスの合間に、よく私のことをオカズにしていると言っていました。逆に俺の事オカズにすることあるの?って聞かれましたが、私は彼に振られてから半年間、思い出す度に泣いてしまっていたので、そんな質問をされて悲しくなりました。
彼は私の気持ちなんて一切考えていなかったのです。
彼がシャワーを浴びているあいだ、私が2月に渡した手紙が開いていたたんすの中に入ってるのを見つけました。セフレでもいい、と書いた部分を読んで文面通り受けとったのかもしれません。
もちろん付き合いたいです。でも付き合っても、こんな人私のことを大事にしてくれないと思います。でも好きです。今まで付き合った4人の元彼に、こんなに好きだと思ったことはありません。
だから、好きな人とセックスするって、こんなに幸せなんだ、と知ってしまいました。もうこんなに好きになれる人以外と付き合いたくありませんし、彼を忘れたとして、彼と同じくらい好きになれる人に出会えると思えません。
思い込みかもしれませんが、とにかく今はそう思ってしまいます。
正直今は、一生振り回されてもいいから、時々セックスに呼んで欲しいと思っています。もしかしたら、彼女とか他にもセフレがいるかもしれません。でもそんなことどうでもいいです。
結婚も今はしたいと思いません。23歳だからでしょうか。
もし彼のことをずっと好きでいて、婚期を逃したとして、彼を恨まずにいられるでしょうか。
この連載に出会うまで、なんで私の気持ちを考えてくれないんだろうと恨んでしまっていました。
でも記事を読んで、彼は恋愛サイコパスで、私がいくら泣きわめいても心配しないし、私はセックスしてもらえてるのに、恨んでは行けないと思い直しました。
そしたら、今は、セックスだけでもいいから繋がれている幸せを享受すべきだと思いました。
今は、というフレーズばかり使ってしまうように永遠に続くものでは無いと思います。
今幸せかどうかもわかりません。毎晩彼を思って泣いてしまいます。
でも、セックスもしてくれない片思いよりは幸せなのかなって思い込もうとしてるようなきもします。
めちゃくちゃ苦しくて付き合いたいです。好きでいることをあきらめることも辛いです。
でも、いざ本当にセックスしてくれなくなった時、自殺してしまいそうで怖いです。
この連載がもしも復活した時に、自殺していませんようにと願うばかりです。
長々とごめんなさい。小説、応援しております。
(みみ・23歳・女・ややメンヘラ)
送信日時:2019年7月
突然だけど、先日はじめて「遺書」を書いた。
ちょうどcakesで、連載再開のお知らせや書影が発表される前日だった。
「明日書影も出るし、ということは本当に本は出るし、やりたいことぜんぶ、現実になってしまうんだ……」と実感したら急に「私もうすぐ死ぬのかな」と静かに直観し、「遺書を書こう」と真夜中に思い立った。
「遺書」というタイトルの”新規書類”を立ち上げたMacで、最初に書いた一文は、夫のことでも息子のことでもなく、元彼のことだった。
15年前に失恋したラスボスさんである。
『Bちゃんへ。ラスボスさんに、私が結局、本当に彼のことを好きだったって伝えてほしい』 (原文ママ)
Bちゃんというのはラスボスさんとの共通の友人である。
遺書のデータが誰にも見つからないと困ると気づいた私は、彼女に遺書をメールで送った。
私の気持ちを正確に理解してくれている彼女から承諾の返信がきたとき、失恋してからの15年が走馬灯のように流れた。
それでふと「時間は解決しなかったな?」と思った。
どういうことかというと……。
15年前。彼に振られて11キロ痩せるほどの失恋ショックに陥ってたとき、あらゆる人が私にかけた言葉、第一位が「時間が解決してくれるよ」だった。
あと「それは愛じゃなくて執着だよ」「何年も付き合ったわけじゃないしマシだよ」もベスト5入り。
当時、私の感情を「予言」や「名づけ」や「軽視」で調理しようとした失恋料理人たちに今思う。
あなたたちに捌けない愛もありましたよ、と。
この世には、時間が解決できないほどの失恋もあるし、常識など凌駕した感情も存在するのだ。
読者のみなさん大丈夫。開いたページ間違えてないです。
とにかく私は相談者さんにまず「私は信じてる」ということを宣誓したかったのだ。
セフレを想って死にそうになる、それも愛だよ。
この1年、誰かに何かを言われてきたかもしれないけど、私が大事に回答したい。待たせたね。
手に入らなくなってからが愛、の私たちは
まず相談内容整理します。
〈23歳、好きな人の都合のいい女をしばらく続けることは未来に悪影響を及ぼすか〉
とのことだけど、今回私が考えた重要な議題は2つ。
①彼への感情どうやったら上書きできる?
②付き合えない彼との関係を無理やり断つべき?
順番にいきます。
①彼への感情どうやったら上書きできる?
〈マッチングアプリの男とセックスしてみたり、仕事に関する勉強をしてみたり、残業を普段の月10時間から60時間まで増やしたり、土日休みなのに、土日にも出勤してみたりしました。でもなんにも彼を上書きはしてくれませんでした。〉
って、彼への想いを上書きしようと様々な行動をしてきたみたいだけど……、上書きの方法はただひとつ「別の人に振られる」だと思う。
そもそもこれ一年前の相談文なので、彼に対する感情もう冷めているのでは?と考える読者さんもいるかもしれないけど、相談文を読む限り、その可能性は5%もないと思う。
あなたは別の誰かに振られてない限り、このセフレ彼を2020年現在もまだ引きずってる気がする。
というのも、今回の恋愛記述で凄く特徴的だなと思ったのは2つ。
ひとつ目は、好きの爆発タイミング。
ふたつ目は、彼情報の開示バランス。
・好きの爆発タイミング
今回の恋愛、「彼が手に入らない」とわかって以降のほうが明らかに「好き」が爆発してるように見える。 「いや振られたらみんなそうなるでしょ」と思う人もいるかもだけど、注意深く考えてほしい。
2ヶ月遊んだだけの同期と一回セックスして、そのあと付き合う気がないと言われただけで〈ショックで怒り狂い、やり捨てじゃん!と叫んで帰〉れる?
それ以降あきらかに価値観合わないと分かるその相手に7ヶ月もここまで強い感情抱ける?
むしろ日に日にその感情の火力こんなあげれる? これが初体験でもなく?
明らかに、振られたあとに好きが爆発的に大きくなってる。
・彼情報の開示バランス
このお悩みのもう一つの特徴は、彼の「好きなところ」が一文字も書かれていないところ。
「別れるべき?」系恋愛相談って、「別れたほうがいいと分かってるのに○○だから別れられない」という葛藤を抱えている。
その○○部分をちゃんと書かないと答えは「別れよう」にしかならないから、性格がいい/スペックが良い/親が相手を気に入ってる/交際期間が長い、など○○部分多めに書く人が多い。
なのに今回、これほど相手のことが好きなのにもかかわらず「好き」情報なさすぎだと思うのだ。
そこで思った。
あなたは私と似て「手に入らなくなってからが愛」な傾向あるのでは?と。
人生で初めて振られたのが、この彼だったのでは? 節々で「あの頃の私」を最も思い出す相談文なのだ。
私の場合、今までラスボスさんのことをこの連載にいろいろ書いてきたけど、「どこが好き」とか書いたことない。 どこが好きなのかなど自分でも把握できないし、把握する必要もないくらい強烈な「何か」に支配され突き動かされて、彼が必須になってる感じなのだ。
あなたも同じ感じ、ないですか?
私はその「何か」がずっとわからなかった。だけど急にわかったのだ。
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