あなたが仕事や人生に怖じ気づく理由
こんな話をしているのには、大きな理由がある。
できることならコンプレックスにまみれた過去の自分など、思い出したくもないし、語りたくもない。実際、これまでほとんど語ってこなかった。
僕は、女の子の前で挙動不審になっていた。キョドりまくっていた。目を合わせることもできず、声をかけられても逃げるように立ち去っていた。自分が女の子とまともに話せるような日が来るとは、想像もつかなかった。
じゃあ、対人関係全般を苦手としていたのかというと、それは違う。
たとえば寮生活の中で、あるいは営業や交渉事で、あたふたすることはなかった。自分の意見を堂々と主張して、必要に応じて相手の意見を聞き入れることもできた。いまでも営業は大好きだ。母に似て、他者とのコミュニケーションが不器用だったにもかかわらず、である。
結局これは、女の子を前にしたときの「自信」の問題なのだ。そして自信を形成するための「経験」が、圧倒的に不足していたのだ。
僕だって、共学の中学・高校に通ってクラスの女の子を好きになったり、みんなで夜まで文化祭の準備をしたり、バレンタインデーにドキドキしたり、告白したり、振られたりする経験を持っていれば、女の子に対する多少の免疫はできていただろう。モテるとかモテないとかは別に、「普通」に振る舞うことができただろう。
これは恋愛に限った話ではない。
転職したいとか、社内で新規事業を起こしたいとか、起業したいといった希望を持ちながらも、なかなか行動に移せない人がいる。
そういう人は、僕が女の子にキョドっていたように、仕事や人生に怖じ気づいているのだ。仕事にキョドり、人生にキョドっているのだ。
仕事と目を合わせることができず、大きなチャンスからは逃げ去り、人生に向き合うと頭が真っ白になる。けれど同時に、仕事や人生と仲良くなることを強く願っている。どう振る舞えばいいかわからず、あたふたしている。まさに、女の子を前にしてキョドっているオタク少年と同じだ。
仕事でも人生でも、もちろん異性関係でも、キョドってしまうのは、性格の問題ではない。ましてや、ルックスなど関係ないし、学歴や収入、社会的な地位とも関係ない。これはひとえに「経験」の問題なのである。