ここから抜け出すには東大しかない
高校へと上がり、気づくと部屋のパソコンも埃をかぶるようになっていた。
しかし、ここで真面目に勉強するような僕ではない。
それまでパソコンに費やされていた時間は、勉強でもスポーツでもなく、すべてが享楽的な遊びの時間へと切り替わっていった。
友達の家に泊まり込んで朝まで麻雀をしたり、ゲームセンターにたむろしたり、当時流行っていたビリヤードで遊んだりと、かなり自堕落な生活だ。当然、学校の成績は悪いままで、親からは毎日のように叱られる。
思えば、中学時代の僕には、パソコンという砦があった。どんなに成績が落ち込んでも、パソコンによって自尊心を保つことができた。自分はみんなが知らない世界に触れている、みんなより先を進んでいる、というちっぽけな自尊心だ。
ところが、パソコンから離れた僕には、もはやちっぽけな自尊心さえ残されていない。将来のことなどなにも考えられず、ただ目の前の快感に流されていく日々。昨日と同じ今日が続き、今日と同じ明日を迎える。率直に言って、僕は高校1~2年当時の記憶がすっぽり抜け落ちている。
どうしてこんなことになってしまったんだろう?
このままどこに行くつもりなんだろう?
友達と一緒にゲラゲラ笑っているときも、上空には醒めた目で自分を眺める「もうひとりの自分」がいた。遊んでも遊んでも、まったく楽しくなれなかった。