コンピュータとの運命的な出会い
中学に上がるのと前後して、僕にはもうひとつの決定的な出会いが待っていた。ある意味、その後の人生を決めたといっても過言ではない出会いだ。
そう、コンピュータとの出会いである。
おそらく、直接のきっかけは映画だった。僕が小学生のときに公開されたアメリカ映画『ウォー・ゲーム』である。高校生のハッカーが、自分でも気づかないうちに北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のホストコンピュータに侵入し、あわや第三次世界大戦を引き起こしそうになる、というストーリーだ。「コンピュータって、なんでもできるんだな!」と興奮したのを覚えている。
ちなみに、1972年生まれの僕は完全なファミコン世代だ。もちろん僕だってファミコンはほしかった。しかし、子どもにゲーム機を買い与えるなど、堀江家の両親からすれば天地がひっくり返ってもありえない話である。ファミコンについては、早々にあきらめていた。
でも、どうしてもあきらめきれなかったのがパソコンである。
僕が中学に入学したのは、1985年。茨城県つくば市で科学万博が開催された年だ。子どもたちは科学やSFに強い関心を持ち、僕も科学雑誌を読み漁っていた。そして、話題の中心にあったのは、いつもコンピュータだった。
まだまともに触ったこともなく、プログラミングの知識など皆無に等しかったにもかかわらず、僕には確信にも似た予感があった。コンピュータを手に入れれば、なにかが変わる。この退屈な日常が、まったく新しいものへと変化する。コンピュータの先にはまぶしい未来があるはずだ、と。
そこで中学の合格祝いを名目に、「これはゲームじゃないんだ。勉強に使うものなんだ」「これからはコンピュータの時代なんだ」と調子のいい話を織り交ぜながらどうにか買ってもらったのが、日立のMSXパソコン「H2」だ。
僕の予感は見事に的中した。退屈しきっていた日常は、パソコン購入を境に一変してしまう。コンピュータの魅力に、完全にハマり込んでしまったのだ。
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