女でいたくない。自分はトランスジェンダー?と思った時のチェック法

今回、牧村さんのもとには「女性として生きていくことや思われるのが嫌です」という方からのお悩みが届きました。男性になりたいけれど、性自認が男性かと言われるとそうではないという投稿者さん。「生きていきたい性と性自認はどうやったら一致させられますか?」という相談に、牧村さんは真摯に向き合っていきます。

※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

女に「女でいたくない」と思わせる何かが社会にあると思います。

2014年より連載中、「ハッピーエンドに殺されない」。

実は、「女でいたくない」って気持ちについて、それぞれ別の人生相談を既に二回取り上げています。

自分の性別が嫌い。でも、異性として生きたいわけではない

今付き合ってる彼女が「彼」かもしれません

そして今回また別の方から、「女でいたくない」というご相談をいただきました。

「女でいたくないならば自分は男だ。LGBTだ。トランスジェンダーだ。自分らしく生きよう。多様性!!」……ってなるのも楽になれる手段の一つかもしれませんが、いやあ、その一本道しかないならば、「LGBTとして生きるルート」しかないならば、それって全く、多様じゃないですよね。

それに、「何が我々を“女でいたくない”という気持ちにさせているのか」という根本原因が、未解明で未解決のまま放置されてしまう。

人を「女扱いされたくない」という気持ちにさせる原因は、正味、人を「女ばっかり守られてずるい」という気持ちにさせる原因と根が同じだと思うんです。それが一体なんなのか、なんとか言葉にしてみましょう。

「女の子、ピュアで無力でちょっとバカ。可愛くエッチでいてほしい」

……という、空気。限りなく圧に近い願望。「きゃっこわ〜い、えっわかんな〜い。男くん助けてぇ〜!強〜いすご〜いかっこい〜!」という姫ポジションで人生をプレイしていく攻略法の推奨。ゲーム用語で言う「姫プレイ(姫プ)」。「男の子はホメられるのが好き!」「どんなに勉強できても 愛されなきゃ意味がない」(秋元康作詞『アインシュタインよりディアナ・アグロン』)みたいな洗脳。世界を男と女とに二分する感じ。「姫と王子でハッピーエンド❤️」ってとこに向かって、本当に走りたい人はいいけど、どっちかというと走らされているのかもしれない、ただただ走らされているのかもしれない、この、感じ。

男性(とされる人)に「強くあれ、女を守れ、戦え、稼げ、勝て、負けるな、家族を……国家を守れ」という圧がかけられているがゆえに、つらみを覚えた一部男性が、女性(とされる人)に「素直で可愛く俺を超えないこと」を求めてしまう。

無口・無力・無学の無理強い。

この地獄の中でつらい思いをしている人が、「知っていますか?人口の○%がLGBTなのですよ……」という、LGBTが本来は社会運動であったということを忘れたLGBT人種説みたいなものを説かれ、虹の国に囲い込まれてゆき、「生まれつきかわいそうだったけど今は自分らしく生きているマイノリティの皆さん」を生きさせられ、感動され、もとの地獄はな〜〜んも変わらない。……っていうのはあまりにも地獄すぎると思うので、ちょっともうちょい考えていきたいと思うんです。

「LGBT」
「トランスジェンダー」
「性自認」
「性的指向」

みたいなところに自分から合わせていくスタイルじゃなくて、

自分自身の言葉を取り戻す方法を。

まずは、ご投稿からご紹介しましょう。

こんにちは、牧村さん。 自分の身体の性は女性ですが、この性別で生きていきたいという性別は男性です。困ったことに、生きていきたい性に性自認が追いつきません。


女性として生きていくことや思われるのが嫌で、男性と思われたいですし、なりたいです。でも、性自認が男性かと言われるとそうではないです。女性かと言われたら、戸籍とか身体が女性なので自分が女性だということはわかってるのですが、認めたくないというかそうではありたくないという気持ちがあります。

だから、性自認をどうしたらいいのかわからないのです。自分を何だと思ってるのかが自分でもわからず、こんなのありなのかと謎で仕方がないです。

生きていきたい性が男性だから、性自認も男性の方が過ごしてて楽ですし、家族にも説明がつきそうなのですが自分、戸籍も身体も女性なんだよなとなり、自認が彷徨ってます。

自認とか関係なしに、生きたい性別で生きればいいのかもしれないのですが、それだと自認と一致しなくなってわけわからなくなってしまいます。トランスジェンダーだと思っていましたが、こうなるともう全く違うのではと思い始めました。

生きていきたい性と性自認はどうやったら一致させられますか?こんなのただのわがままなのでしょうか?

相談に乗って、考えてくださると嬉しいです。

(ご投稿に一部改行を加え、全文掲載しました)


よくぞ、「生きたい性別」という言葉にたどり着きましたね。めちゃんこブラボーだと思います。

欧米のジェンダー・セクシュアリティ論が日本語に入るにあたって、次のような翻訳が当てられましたでしょ。

からだの性(sex)
こころの性(gender identity)
好きになる性(sexual orientation)

わたしから見て、これらの何が最もヤバかったかというと「こころの性」です。元の英語ではgender identity、自分がどのジェンダーにアイデンティティを持つか、自分が自分で自分をどう思ってるのかって話なんですよ。「性自認」って訳がやっぱり良かったとわたしは思う。

これを「こころの性」って訳しちゃうと、「こころ」というものに客観的に判別可能な性別があるかのように錯覚しちゃうでしょ。「先生、この子のこころの性は何なんでしょうか!?診断してください!!」ってなっちゃう。悩んだ人が「こころの性 診断」とかで検索しちゃう。何なのか決めなきゃいけない感じになっちゃう。

その状態で日本語ワールド、「トランスジェンダーとは、からだの性と、こころの性が一致していない人たちのことです。」みたいな説明がされちゃったからもう大変ですよね。

「自分のからだの性は女性なんだ!」
「じゃあ、自分のこころの性は何?」
「自分の好きになる性は何?」

あらかじめ誰かが用意した枠組みの中でわかりやす〜く考えさせられてしまう。

「こころとからだが一致しない」
「同性しか愛せない」

自分こそは中央に座った普通の人です、って顔をした誰かが人を周縁みたいに指差して否定形でものを言う。

いいんです。
もう、いいんです。

あなたは、自分で考えられますよ。

というより、自分でしか考えられない。あなたの内面のことは、画面越しのわたしにはわからないし、ググってもインターネットに載っていませんから。載ってたら逆に怖いもんね。ということで、考える方法を考えていきましょう。

どうぞ、ペンとノートをご用意ください。 書いたことを人に見られたくないならば、今はいい道具がある。 スマホをご用意ください。スマホにそもそも認証ロックかかってると思いますが、さらにパスワード付きにできるメモアプリや日記アプリもある。安全に書く場所をご用意ください。

そんで、この二つをね、徹底的に書き出していきましょう。

・自分は〇〇がいい。
・自分は〇〇が嫌だ。

〇〇を埋めていきましょう。人に見せるものじゃない、上手に書こうとしなくていい、文法とかがおかしくなってもいい、自分さえわかれば自分の言い方でいいから、頭に浮かぶままに書き出してみましょう。

例として、わたしの場合をやってみますね。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

KOHCTAHTNHj 性別を意識しない「ブラボー」表現を探していたはずなんだが https://t.co/6teuJXiPMY https://t.co/VCA0yC3TUk 3ヶ月前 replyretweetfavorite

shokoku_junrei 『自分が男女どちらかの性別に配属されたことで受けた苦しみはね、その外側にいるように見える人々への憎悪へと、簡単に変わってしまう危険性があるんですよ。』 https://t.co/GgYP2ignfU 4ヶ月前 replyretweetfavorite

bhyouki "「女だからとナメられたくねえ」という苦しみ"でトランスする女性って本当にいるのだろうか 4ヶ月前 replyretweetfavorite

dot_sakurada このネタなら、なんでROGDについて語らないんだろ。 4ヶ月前 replyretweetfavorite