夫は、癌が急速に進行したとき「癌さんよ。もう少しゆっくり生きようや。僕が滅びたらあなたも死んでしまいます。嫁さんよ。あんまり悲しみすぎないで。私が代わりになればよかったのにという考え方はまちがってます。癌細胞やウィルスは人を選びません。これは僕に降ってきた。あえていうなら僕は少し……運が悪かった」と、言葉を残した。
ウィルスは人を選ばへんのか…なら、かかってしまった人のことを、どう思えばいいかな?
これも人間に課せられたウィルスからの挑戦である気がする。
恥ずかしいのだけど感染拡大当初は中国語が聞こえると、心がざわついた。差別している自分を知ると同時に、心無い言葉にも出会った。マスクをしていなかったお口からは漏れなかった「きもー」「きっしょー」「なにあれ」の声がすれ違いざまに聞こえてきた。結構立て続けに起きたので、私は泣いた。「7歳の頃は耐えられたことも57歳?ではきつかったんや。おかん、泣くなよー」と息子には大笑いされたが。
考えてみたら、コロナ前から障害者はリアルに登場してはいけない存在だったのかな。
バンデミックやロックダウンという言葉は強烈で、本当は何が起きていて誰がどんなふうに困っているかを隠してしまう。
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