cakes読者のみなさま、こんにちは。
いつの間にか夏のど真ん中、梅雨の真っただ中。じめじめが半端ないこの時期は、香ばしいけど酸っぱくて、しゃきっとした辛みのあるものが食べたい。旅が足りないこの頃は、食べ物からふと、昔の旅を思い出したりしています。
ある暑い夏の昼どき。ポルトガルの海沿いの小さな町を友人と歩きながら、どこでお昼を食べようかと迷っていたら、ひときわ客で賑わうシーフードレストランを見つけました。中を覗いてみると、客の話し声でわんわん盛り上がる店内は、こんがり焼けた魚介類の香りでいっぱい。思わずそのまま入り口の男性に「2人です」と伝えると、クーラーのきいた中か、外のテーブルにするかと聞かれました。眺めはいいけど外は暑い。ここはやっぱりクーラー優先かなと「中で」、と言いかけたとき、一緒にいた友人がほぼ同時に「そりゃこんな眺めがいいんだから外さ、気持ちいいもん、ねえサヨーリ」と、ポルトガル語訛りで私の名を呼びながら、嬉しそうに言いました。外しかないよね、外一択!という彼のうきうきした表情に、うぬぬと何も言えなくなった私。そう、ポルトガルの人達はオープンエアで食べるのが大好き。暑くても、眩しくても全然大丈夫。サングラスをかけながら、カラコイシュというカタツムリのピリ辛煮や、いわしの炭火焼きや、小あじのフリットを食べてはワインやビールをどんどん開け、ひたすらしゃべる。そうやって休日などは、ランチに3時間近くかけたりします。ビーチで焼けなくても、ランチで焼ける。
そのときの食事でひときわ印象的だったのが、イカのグリル。こんがりいい色に焼かれた肉厚の紋甲イカ(しかも墨入り)がどんと皿に乗っかって、緑のソース、サルサヴェルデが添えられていました。ポルトガルでは、グリルしたシーフードに添えられる定番ソースで、緑の名の通りコリアンダーやイタリアンパセリが入っていることが多いのですが、その店のサルサはすごくシンプル。玉ねぎ、にんにく、青唐辛子、ビネガー、オイル、以上。ビネガーの酸味や青唐辛子のシャープな辛み、にんにくのうま味や辛みがきいて、こんがり香ばしく焼かれた甘味のあるイカに、痺れるほどよく合っていたんです。ほんの少しでいいんだけど、あるとないとでは天地ほどの差がある。シンプルなグリルには、欠かせないアクセント。最初にこのサルサを考えた人に、心の中で大きな拍手でした。
今もイカを見ると、あの暑いテーブル席と、添えられたサルサを思い出します。なんたって、冷えた白ワインやビールに笑っちゃうほど合うんですから。
日本ではちょうどするめいかが旬を迎えているので、今回はするめいかで作りました。太平洋側では夏から秋にかけてが旬とされ、夏イカとも呼ばれています。以前青森県の三沢漁港を取材したときは、7月後半から9月にかけてはイカ漁が昼に行われ、「昼イカ」と呼ばれる鮮度の高いするめいかが市場に出回ると聞きました。旬のものは値段も手頃。ついでにオクラなどの夏野菜も一緒に焼くと味のバリエーションも楽しめる。焼きオクラも、これまた香ばしくていい。一皿でつまみにもおかずにもなるボリュームです。
では、パパッと作っていきましょう。
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「いかとオクラのこんがりサラダ青唐辛子ソース」
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