小池百合子の「わかりやすさ」の罪

耳障りがいいだけの言葉が飛び交っています。コロナ禍においても、実際の感染者数やどれくらい休業が続くのか、補償はどの程度出るのかと言ったことが知りたいのに、「ロックダウン」や「オーバーシュート」のような聞き慣れない横文字ばかりが目に付きます。今回の武田砂鉄さんは新刊『わかりやすさの罪』を上梓した記念に、小池百合子の「わかりやすさ」について論じていただきます。

小池都知事を見習い、自著の宣伝につなげる

東京都知事選挙で圧勝した小池百合子は、「新型コロナ対応に忙しくて、選挙どころではないんです」という態度で選挙に臨んだ。『IPPONグランプリ』ばりの頻度で緑色のパネルを掲げ、「異例の感染症対応に勤しむ自分」と「従来の選挙活動で必死になっている候補者」を比較させることで、自分でなければならない必然性を高めていった。

従来の選挙であれば、「変えましょう!」と声を張り上げたライバルに対し、「その必要はありません!」と応じる必要があるが、今回は「変えましょう!」に対して、「ちょっと今、それどころではございません」と逃げた。どんな事象でも自分の利益に変換しようと試みる彼女に通底する態度くらい見抜きたいものだが、今回ばかりはその姿勢を見習い、小池百合子を論じることで自分の利益を得る、つまり、発売したばかりの自著『わかりやすさの罪』の宣伝につなげようと思っているのだ。

ただただ、力強く言ってみただけ
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武田砂鉄さんの新刊です

わかりやすさの罪

武田 砂鉄
朝日新聞出版
2020-07-07

この連載について

初回を読む
ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

amiu_iamu 一見わかった気になるパンチのある言葉達は、ただ単に人々の思考を停止させてるだけだよなと感じることはとても多い。 https://t.co/dj76gKTY0Z 4ヶ月前 replyretweetfavorite

motzmotzz この部分は全分野に通ずると思うわ |ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜|武田砂鉄|cakes(ケイクス) https://t.co/NozL96a7Wc https://t.co/cIeu8eu8Jc 4ヶ月前 replyretweetfavorite

TKKadanny 砂鉄さん、私たちはどうしたらいいでしょうね。わかりやすさと雑な議論を放置したくないです: 4ヶ月前 replyretweetfavorite

takedasatetsu なんでも自分の宣伝に活用する小池都知事を見習い、氏のことを考えながら自著の宣伝につなげるズルい原稿を書きました。 「言ったところでどうなるわけでもない言葉であっても、『言ってみた私』という状態を維持することはできる」 https://t.co/ensBBPtsUs 4ヶ月前 replyretweetfavorite