「技術が分かるだけのエンジニアや、コードが書けるだけのプログラマーはもう求められない。必ずコミュニケーション力が必要だ」──。大手IT企業の管理職はこう述べる。
一方で、次のような実例がある。教育事業を行うある都内の企業は、IT化を推し進めるため、社内外からエンジニアやプログラマーを集めて新たに「IT事業推進部」を立ち上げた。
部長に就いたのは、営業部で次長を務めていたAさん。コミュニケーション力が高く、役員に気に入られているため事業を任されたのだ。
当初は、IT化への機運と可能性の中で部署内は和気あいあいとしていた。しかし、技術や専門知識に乏しいため部下の個々のスキルや納期を考慮せず、取引先に言われるがまま仕事を引き受けてしまう。それは現場へのしわ寄せとなり、部署内の雰囲気は徐々に重くなっていった。
その上、「Aさんはどうもよく分かっていないらしい」と、取引先もうすうす気付き始め、仕事は激減。退職者や異動希望者も続出し、業務が続けられる状況ではなくなり、程なくIT事業推進部は解体に。会社にとっても、Aさんにとっても、部下にとっても、不幸な結末を迎えた。
文章に苦手意識を持つエンジニアは多い
このようにならないためにも、「技術かコミュニケーション力か」ではなく、両者を兼ねそろえた人材を企業は求めている。
コミュニケーション力とは「人に伝える力」。もちろん、文章を書いて人に伝えることもコミュニケーションだ。
提案書、報告書、仕様書、説明書など、文章を書く機会がエンジニアやプログラマーは多いはずだが、文章に苦手意識を持つタイプは多い。
技術やプログラムは論理的に正しくないと動作しないため、書く力に必要な「論理」の素質は備わっているはずなのだ。あとはそれを生かせるかどうかである。そのためにはトレーニングが必要だ。
何もないところから文章を書くことに気が乗らない人も多いかもしれない。そのようなときは、あなたが過去に作成した業務上の文書や、ほかの人が書いた「分かりづらい」文書を用意し、どのように改善すればよいかを考えてみよう。
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