天気が不安定な折り、出かける計画を立てるのもなかなかたいへんかもしれませんね。今回は、心に静けさをもたらしてくれそうな展示を、ぜひご紹介いたします。
白と黒の世界、その濃淡だけであらゆるものを表現するジャンルといえば何でしょうか。モノクロ写真? たしかにそれもそうですが、もっと長い歴史を持つもの。そう、墨絵です。中国で生まれ出て、日本に伝わったのち、それぞれの地で独自の発展を遂げたものです。日本における墨絵表現の達成を観られるのが、根津美術館での「清雅なる情景 日本中世の水墨画」展です。
出品されているのは、すべて墨絵作品。当然ながら、白と黒以外の色はそこにありません。ですが、会場を見渡して「彩りが足りない」といった感じはまったくしませんよ。風景、人物、動植物と、モチーフになっているものはさまざまですが、どれも色が足りないのではなく、画面はむしろ豊潤な印象を与えます。