これを書くのってすごく勇気がいりませんか?
大熊信(以下、大熊) 次の言葉にいきます。
(編集部注:スライドの右下は連載時の記事タイトルです)
大熊 この相談を送ってきたひとは、2歳半の息子さんの子育てをしているお母さんで、とにかくストレスがたまりまくっててどうしたらいいかわからない、苦しいっていう悩みだったんですけど。
幡野広志 (以下、幡野) 大変そうだ。
大熊 幡野さんは冒頭で、ワンオペ育児ができてるひとと比較してもしょうがないから、3日前の自分と比較してそれよりもよくできたらそれでオッケーということにしようよっていう回答をしたんですけど、そのあとに、この「暴力をふるっていますか?」っていう言葉がきたんですよ。
幡野 はいはいはいはい。
大熊 この相談者のひと、「私は息子に暴力をふるっています」なんて一切書いていないんですよ。
幡野 でもこのお母さん、実際に暴力をふるっていると思うんですよ。
大熊 これって、前回幡野さんが言ってた、たくさんの相談文に目を通してると嘘かどうかが自然とわかる、というのと一緒なんでしょうね。
幡野 最初、このお母さんに「暴力をふるうなよ」っていうことを言おうとしたんだけど、それじゃ単純な決めつけに見えてしまうから、クギを刺す的な意味合いもこめて「暴力ふるってます?」って言いかたをしたんだよね。
大熊 そのあとの幡野さんの回答を読んでいくと、実際にこのひとは暴力ふるっているかもしれない、というのがすごくわかるんですけど、それでも「暴力ふるってます?」って書くのってすごく勇気がいりませんでしたか?
幡野 そうですね。
大熊 特にWebの記事でこれを書いてしまうと炎上するリスクがある。ぼく、この記事を公開するのけっこう勇気がいったんですよ。
幡野 なるほどね。
大熊 そんなこと決めつけんじゃねえよ!とか怒るひとが出てくるだろうなと。
幡野 「暴力ふるっちゃダメだよ」って完全に決めつけた言いかただったら、炎上していたかもしれない。でも、「ふるっていますか?」っていう言葉にドキッとした親はいると思いますよ。一番ドキッとしたのは相談者自身じゃないかな。
大熊 前回の「風俗嬢に恋をしました」の10文字に幡野さんが3000文字で答えたのと一緒で、真剣に向き合っているからこそ言えた言葉なのかなって思いました。
幡野 ぼく、相談がきたら、その相談したひとの立場にまず自分を置き換えてみるんですよ。で、その周りにいる子どもとか、風俗嬢の女性とか、それぞれの立場に自分を置き換えるんです。そうやっていくとだんだんと総合的に見えてくるというか。
大熊 へー、そういう感じなんですね。
幡野 あと、けっこう指摘されることなんですけど……「HSP」って言葉知っています? 「ハイリー・センシティブパーソン」と言って、最近『「繊細さん」の本』という本も出ています。要は相手の感情読み解けたりとか、嘘がすぐ見抜けたりっていう気質を持つひとのことだと思うんですよ。「幡野さんってHSPですよね?」ってよく指摘される。
大熊 へぇ。
幡野 それだけ聞くとすごくいいじゃないって思うでしょ? スーパーマンみたいで。
大熊 はい。
幡野 それがそんなことなくて、蛍光灯が苦手だったり、ぼく、カメラマンなのにストロボが苦手なんですよ。瞬間的にパシャって出る光。昔からダメで、なんでこんなにダメなんだろうって思っていたんだけど、たぶんHSPだからなの。
大熊 たしかに幡野さんがストロボ使っているのあんまり見たことないですね。
幡野 必要なときにはもちろん使うんですけど、苦手なんですよ。HSPって明確な定義はないんですけど、感覚が過敏だったりするひとってわりといますよ。いい面だけじゃなくて、むしろ苦労しているひとのほうが多いんで、全然良くないんですけど。
大熊 そうなんですね...!
幡野 たとえばみんなに注目されていると文字が書けなくなっちゃったりとか。
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