よしもとばななの意味深力
今のなんだろう? いろんな想像を掻き立てられる。
会話の中に急に出てくるズレた発言。ふしぎな言い回し。
思わず「えっ、いまの、どういうこと?」って聞き返したくなる。
そういう発言をする人っていますよね。
先日、友人たちと飛行機のフライトって慣れるものかね、どうかねという話をしてた時、唐突に「でも私、バス乗るの好きだな」って呟いた子がいました。
「へ、なんでいきなりバスの話?」聞いても、「いやただ、そうなだけ」って答えになってない。
どういうことなんだ。
意味深なことを言ってるのに、「なんでもない」ってはぐらかす……なんなんですかね。
ひとりごとならひとりの時に言うべきだろう。
しかしこんなコミュニケーションが「有効」であることも私は知っています。
ええ、知ってるんですよ。
謎めいたセリフを聞いた時って、その真意を聞かないほうが「あれは一体なんだったんだ ……」と想像がふくらみますものね。
なんでもかんでも理路整然と説明するより、ちょっとくらい「説明不足」なほうが、楽しいんんですよきっと。
この雰囲気作りが、文章でも上手い人っているんですよねー!
一瞬、「いまの一文はなあに?」と首をかしげたくなったのはこれ。
〉窓の外には淋しく星が光る。
冷蔵庫とか台所の話をしていたのに、いきなり窓の外の話。
淋しく星が光る、ってどういうことだろう?
一番星が夜空でひとりぼっちで淋しげに光ってるってこと?
それとも都会のビル明かりが淋しそうってこと?
いろんな想像が掻き立てられます。
よしもとばなな先生は、この「星が光る」の説明をせず、「私と台所が残る」と続けました。
星が光る説明を、しないの?
読み手は余韻にひたりたいのに、ひたらせない!!
本筋とは直接関係ないけど、関係ありそうな気もする、ちょっと気になる一文。
これは料理に入れるひとさじのスパイスのごとく効きます。
つまり文章全体に深みが増すのです。ほんまやで。たとえば、こんな具合に。