自分でいうのもなんだけど、私の恋愛論は人気がある。夫婦ネタも含めて、男女のことについて語ると天才扱いされることがとても多い。恋愛論は作家・下田美咲にとって大の得意分野で、私はそのことを武器にして今の状況を確立した。
男女にまつわるコラムを書いたり、読者の方からの恋愛や夫婦にまつわるお悩み相談や質問に答えたりしていると、よく「下田さんはどうしてそんなに想像力があるんですか?」「なぜ、そんなに男心が分かるですか?」「どうしてそこまで気が回るんですか?」などと訊かれる。
そんな風に訊かれるたびに思っていることがある。
みんなはそれを特殊能力か何かだと思っているようだけど、実はそうではなく、これは私のあまりにも泥臭い生きざまがあってのことなんだよ、と。
たしかに、勘もセンスも良い方だとは思う。だけど、そんなことよりも私を私たらしめているものは、地道に足を運んで集めてきたデータの量が多いことだ。
私は、10代の頃から体を張って、異常なほどに男女にまつわるリサーチ活動をしてきた。その結果として、知っていることが妙に多い。
つまり、想像力ではない。頭の中に豊富なデータを持っているのだ。天性の才能に恵まれたからではなく、めっちゃ熱心に研究をしていたらこうなった。
両親の不仲にショックを受けた6歳
幼稚園児の時には、すでに結婚というものへの希望を持っていない子どもだった。
何がキッカケでそのような考えに至ったのかは分からないのだけど、「大きくなったらお嫁さんになりたい!」と語るクラスメイトに対して「結婚なんて人生の墓場なのに?」と返すような園児だった。
父と母が離婚の可能性をほのめかすような話し合いをしているのを初めて目撃してしまったのは6歳の時のことで、ひどくショックを受けた。
念願のおもちゃを買ってもらった日だったのに、嬉しかった気持ちなど一瞬で吹き飛んで、その代わりに「お父さんとお母さんは別れることにしたけど、あなたはどっちに付いてくる?」という究極の選択を近いうちに迫られるのかもしれない、という恐怖で頭がいっぱいになった。
両親の不仲を知る前から結婚に対して否定的な幼児だったのに、もっとも身近にいる夫婦が年々その仲をこじらせていく様子を見て育ったものだから、思春期を迎える頃には、もはや結婚恐怖症に近い状況に陥っていた。
まだ中学生なのに、彼氏から「いつか結婚しようね」と言われるだけでヒヤッとしては「今はまだ法律的に結婚が不可能な年齢だから、相手に何を言われようと適当に流していれば大丈夫だけど、16歳の誕生日が来る前には別れないとな……結婚なんて全然したくないし……」と憂鬱になっていて、このままだと16歳以降の恋愛がしんどくなるだろうという予感がして悩んでもいた。
「結婚の成功例が見たい」
私は、そんな自分がずっと嫌だったのだと思う。
ある時から「結婚の成功例が見たい」と考えるようになった。もっと具体的にいうと「結婚後もずっとラブラブが続いていて、幸せに暮らしている夫婦の例を目の当たりにしたい」という野望を抱くようになった。
そんなカップルって本当にいるの? 失敗じゃない結婚なんて、あるの? 全然ある気がしないけど!
もし、あるならばぜひ見てみたい! そして成功の法則なり秘訣を知りたい!!!
という、知的好奇心のようなものが爆発していた。
結婚願望は、ないよりもあった方が生きていきやすい。その頃の私は、まだまだ結婚適齢期からは遠い年齢だったけれど、それでも「あまりにも結婚願望がなさすぎると、恋人と迂闊にラブラブになれなくて息苦しい。ストロベリートークを楽しめない。女として不便」と感じていた。
そうして私は実際に、結婚の成功例を探し始めた。